L'art de croire             竹下節子ブログ

パリの奇跡の治癒の話 その9

(これは前回からの続きです)

サン・ニコラ・デ・シャン教会は「パリのルルド」と呼ばれているわけだけれど、では本当にそう感じたかというと、そうでもない。

スタッフたちは熱心だけれど、私の場合、なんというか、熱意より善意、熱気より静寂の方を求めてしまう。

ルルドにはそれがあるし、そのせいで、「祈願」よりも「祈り」、「感謝」の方が感じられる。

もちろんルルドの洞窟で嗚咽する人もいるし、車椅子の人、意識のない人、担架で運ばれて参加する人もいるのだけれど、深刻さがいろいろと相対化されて、エゴが小さくなる。

また、どんなに多くの人がいても、その多くは「巡礼団」のグループで、みんなが思い思いの場所で別々の時間に別々の言語で集まっているので、一人のリーダーに鼓舞されるという雰囲気がない。

ルルドは聖母の出現地だけれど、「聖母崇拝」になってしまわないようにちゃんと聖体行列もメインになっている。
それに、水、聖水、山、川、洞窟、十字架の道、ぎっしり並ぶみやげものの聖母像など、いろいろなイメージと旅の非日常感が重なって、心身の疲れを感じなくなってしまうこともある。

聖地に刻印されてきたエネルギーも、熱気を感じるというよりは、濃く、深い。

その次の週、吉井秀文さんの個展を見にギャラリーに行った時、、すぐ近くにノートルダム・デスペランス(希望のノートルダム)教会があった。これが教会なのかと一瞬驚くほど近代的な建物だ。

1928年の教会を取り壊して1997年に新しく献堂したというから細部にさまざまな工夫がしてあって、まだそのモティヴェーションが脈打っている感じだ。

18世紀の古い建物の梁を立てた十字架がまたユニークだ。
その縦の梁の存在感がすごいのに、横木がないのだ。翌見ると、梁の真ん中と、左右に金色に塗られた四角があって、横木はそれをつなげてイメージするようになっている。

光の十字架というのだそうだ。

「こんなに斬新なの、文句をいう人はいませんでしたか?」と尋ねると、「それはものすごく批判する人もいましたよ」ということだった。

でも、この空間によく合っている。

1930年制作の聖母子像が二ヶ所にあってこれもすごくいい感じだ。

がらんとした教会で、この聖母子像の前に座ると、自然にいろいろな祈りがあふれてきた。

教会の前には、フランシスコ教皇の指示を受けて難民家族をどのように受け入れるかについての教区の会合を10/1に開きます、と張り紙がしてあった。

誰が、いつ、どこで、どのように癒されるのかなんて、誰にも分からない。
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by mariastella | 2015-10-06 00:16 | 宗教
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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