L'art de croire             竹下節子ブログ

「反知性主義と向き合う」の感想 その2 信田さよ子さんのこと

(これは前回の続きです)

『「反知性主義」と向き合う』特集の中に、まさにその団塊の世代の信田さよ子さんの討議が載っていた。

信田さよ子さんのことは、彼女からカウンセリングを受けていたある女性を通じて少し聞いたことがあった。

彼女の「母娘問題」には違和感があった。

「母に対する罪悪感から娘を解放す」るという感じの姿勢がなんだかなあと思っていたのだ。

でもこの対談の中で、

日本の母というのは国と同化し、ナショナリズムと同化し、天皇制と同化して生き延びてきたので、

「これぞ日本の本音」ということ、すなわち「いい大学へ行かなきゃだめよ、下流になっちゃだめよ、女として子供を産め、年取ったら私の面倒をみろ」となどと娘に言うのだと紹介している。

その母親というのが団塊の世代である信田さんと同じ世代なので強烈な近親憎悪があるのだそうだ。

つまり、信田さんのように若い時母親に向かって「うるさい!」といった人たちがいつの間にか日常に帰還して国と手を結びぬくぬくと生きていることに怒っている。

だから彼女は娘たちの味方で、母からの「愛情による支配」を逃れて適正な自己責任を持つためにも、いったんは「親が悪い」と責任をおしつけることもありだというのだ。

そして日本の特徴は、表向き権力を持たず金も稼がず虐げられて我慢をしているという「力のない人」「弱者ぶる」「母」による支配というのが日本の家族を席捲していることで、今のアラフォー世代はその犠牲になったという。

うーん、これもそう言われると愕然とする。

自分が進路や子供や老後について母娘間の示唆などしたこともされたことも一度もないし想像さえつかないミクロ・カルチャーに生きてきたからかもしれない。

とにかく、この話を読んで、信田さんのスタンスはよく分かった。シンパシーも感じる。

しかし、日本における家族は「愛の共同体」などではなく、「金」に支配されているとか、すべての建前が崩れて最後に残ったのが金と暴力だという指摘も恐ろしい。

特に女性は「婚活」だって金で、愛情がなくとも社会保障があり退職金の出る正社員とならみなけっこう結婚するとかいう指摘もあった。

そんな元も子もない分かりやすさを何とか知性で持ち堪えなければならないから、信田さんは反知性主義という言葉に反応するのだそうだ。

今ヴァティカンでは家族シノドスが開かれているが、家族が金と暴力だというのが「元も子もない分かりやすさ」と評されている国のことを教皇が聞いたら卒倒するかも知れない。

けれども一方で、

「日本の家族幻想とは、母という存在の巨大さをバックにしており、ちっとも父の権威ではないというところが、フロイト理論とは全く違う」

というところは、カトリック世界における聖母マリア崇敬の大きさ、重さ、深さにも通じているので、興味深い。

このことについていつか考えをまとめていきたい。
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by mariastella | 2015-10-18 07:30 | 雑感
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