L'art de croire             竹下節子ブログ

ヤン・アルテュス=ベルトランの『Human』

9月半ばに公開されたヤン・アルテュス=ベルトランの『Human』ほど鳴り物入りだったのに期待外れだった映画も珍しい。

とにかく多くの人に見てもらうために、ということで、国連や映画館の上映の他にTVでも放映されインターネットでも無料で見ることができるという画期的な公開のされ方で話題になった。

『HOME』と同様の美しい航空写真の合間に世界中で63ヶ国語、2020人にインタビューしたという断片が出てくる。

みなクローズアップ。

パレスティナやイスラエルの人、アフガニスタンの兵士、コロンビアの子供たち、フランスの年金生活者など雑多で、「あなたにとって幸福とは?」などの質問に時おりはっとするような答えを聞ける。

いろんな人がいるなあ、という感慨、個々のケースでの悲憤や感動、はあるのだが、いや、あればあるほど、3時間以上の長上場が重く、耐えられなくなる。

こんなにユニークでアィデアと野心がある大作がここまでつまらないというのは驚きで、こちらの感受性に問題があるのかもしれないと心配になるくらいだ。

今ではウェブで多くの良質で珍しい画像が出回っていて、多くの人にシェアされながら回って来るので、この手の情報に対してなんだかすっかり「すれて」しまった。

昔ならナショナル・ジオグラフィック誌でも買わなければ見られなかったような素晴らしい写真、珍しい写真が、音楽付きで出回っているし感嘆して何度も見たものもある。

アルテュス=ベルトランの編集というものが大きなメッセージ性を担っているはずなのだけれど、ばらばらで「うねり」にならない。

地球の自然と文化の多様性、人間の愛や悲しみの普遍性、平和の大切さと決意、みたいなものをねらっているのは分かり過ぎるほど分かるのに、その分かりやすさが安易さになってぺったりと動かない。

だからコメントのしようがなくて今まで書かなかったのだけれど、これは「モノをつくる側」にとってメッセージを伝えることの意味と方法についてじっくり考えるヒントを与えてくれると近頃思うようになったので、ひとまず覚書として残しておこう。
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by mariastella | 2015-11-11 01:27 | 映画
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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