L'art de croire             竹下節子ブログ

パリのテロ再び

いろいろな方からメールをいただいたので、ここでまず、私や私のしっている人たちには被害者がいないことをお知らせします。お気づかいありがとうございました。

バタクランのコンサート会場では先週の土曜にファイナル・ファンタジーゲーム音楽のピアノリサイタルがあって、私に近い人間が数名聴きに行っていたばかりなので、さすがに感じるものはありました。

でも、正直言って、シャルリー・エブドの時は、襲われた出版社の週刊誌も、イラストレーターも、作品をずっと知っていた人たちなのでショックが大きかったですが、こういう無差別テロとなると、死者何名という「数」がまず現れてくるので、恐怖はあってもショックは別のものでした。

一晩の空襲で十万人死んだとか、何千人の難民船が難破して全員死んだとか、原爆で何十万人とか津波で数万人とか、恐ろしいけれど実感できない数字ばかりで、ほとんど抽象的な感じがします。

これまでターゲットになっていたのがユダヤ人学校とかカトリック教会とか軍人とか、ある程度分かりやすかったので、「普通のフランス人」はあまり気にしないで、昨日(11/13.イスラムのテロは金曜が多い)も法改正に反対する医師たちの派手なデモがあったばかりです(その医師たちがレピュブリック広場界隈に残っていたので緊急医療を手伝ったという情報もありました)。

フランスは最近シリアにおけるフランス人ジハディストの軍事訓練フィールドを爆撃し始めたし、ISからはかなり前からはっきりと宣戦布告されています。

それでも人々は結構能天気に暮らし、昨日も、今期の成長率がプラスだったと言って、今年は去年よりもクリスマスに消費する人が多いと楽観的でした。

ところがテロの緊急事態で突然デパートは締まるし、月末のCOP21の掛け声もしぼみそうです。
大統領はトルコのG20を欠席しますし、イラン大統領のヨーロッパ訪問もキャンセルになったと聞きました。
来年はサッカーのユーロ杯なのに今回スタジアムでテロがあったことにもあせっているようです。

私が思い出すのは1991年の初め、湾岸戦争の影響で爆薬テロが心配されていた時期です。

あの時以来、フランス人の昼食行動は変化しました。
ゆっくりレストランで食べる人が減って、サンドイッチやサラダをテイクアウトしたりその場で食べたりする人が増え、そういう場所があっという間に増えたのです。

パリはどこもがらがらで、私も引きこもっていました。
どこでも「持ち主の見えない荷物」への警告のアナウンスがありました。
戦後日本に育った私には、あの頃が一番陰鬱で暗くなりました。

今回の「緊急事態」がいつまで続くのかはしれませんが、今はどちらかというと引きこもりがデフォルトになった私にはあまり打撃はありません。

どうしてアラブ人街もある10区や11区ばかりが狙われるのだろう、政治決定をしているエリートの住む16区やら西郊外を狙わないんだろう、と嘆く地元の人がいます。

よく言えば(?)マリアンヌのそびえたつレピュブリック広場という共和国理念のシンボルのあたりを狙っているのでしょうし、現実的には、10区や11区ではアラブ人が多いし雑多な街だからこそ、いちいち差別的職務質問もしていられないし、うまく隠れて多発テロを遂行するには便利なのでしょう。

政治エリートの住むような町では警備が半端じゃないし、スーツを着ていない非白人が歩いているとそれだけで目立つでしょうから、テロリストの戦略的にはコスパが悪すぎるのでしょう。

思えば日本も先の人質事件の時にISから脅迫されていましたよね。
今やますます勇ましい「普通の国」になろうとしていますが、このままいけばオリンピックとか大丈夫なのかと本気で心配になります。
阿部首相は来夏の参院選後の改憲についての答弁で「緊急事態条項」の新設を重視すると明言したそうですが、それも含めて嫌だなあ、と感じています。

パリのテロについては、もう、ターゲットが予告されているものや国際会議などの警備以外、国内にいる自爆テロリストが武器を持って無差別に普通の町で無差別に銃撃するのをすべて阻止することは不可能、と言い切る人もいますし、その通りだと思います。

ISの本拠に軍を送って本格的に戦争する予算もないし後100人以上はいるという国内の「シリア帰り」テロリストを含めて、すべての危険人物を拘束してどうにかなるものでもありません。

もっと根本的な対策が必要で、よい提案をしている人もグループもあるのですが「遅きに失した」感もあります。

考えることはたくさんありますが、まずは第一報ということで。
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by mariastella | 2015-11-15 00:40 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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