L'art de croire             竹下節子ブログ

人間の兄弟、ジハードと十字軍

30年以上愛読しているカトリック週刊誌が普段より一日早く同時多発テロ特集で発売された。

聖職者とか修道会が作っているものではなくリベラル・カトリックのジャーナリストが出している伝統ある雑誌だ。

表紙がパリの町を闊歩する兵士たちの写真で大きく「La France en GUERRE(戦争)」と書いてある。

軽々しく戦争という言葉と画像を使うことに少し失望した。

どのメディアも同じ路線だが、少し変わった書き方をするかと思ったのだ。
巻頭の言葉にも気になるものがあった。

野蛮な無差別テロに悲憤を表明するのはいい。
イスラム過激派とムスリム、過激派と宗教、外国人とテロリスト、宗教と暴力を混同するなというのもいい。

でもその後に、

「イスラム過激派はイスラムにとって死に至る病で我々の時代の最大の禍だ、(といっても)それは我々同じ人間の兄弟であるムスリムを糾弾するものではない」

とあったのが気になった。

信教や文化の別にかかわらず人間はみな兄弟だというのは分かる。

でも言い換えると、無差別テロという非人間的な蛮行をするテロリストは我々と同じ人間ではなく、兄弟ではない、という風に聞こえる。

蛮行が非人間的だからと言ってそれをした人が「人間ではない」と思ってしまうのは危険な気がする。

もちろん正当防衛の本能というのは分かる。
だから、たとえ悪意のない人(例えば薬や精神の病で幻覚にとらわれて関係のない他者を攻撃するなど)に襲われた時に、自分や被害者の身を守るためにとっさに相手を倒してしまう、というようなことだってあるかもしれない。
ましてや悪意、害意を持ってテロを遂行する相手にその場で刃向かうというのは自然なリアクションだろう。

でもそれは、その行為に対して、攻撃に対しての抵抗であって、相手が「人間ではない」から殲滅してもいいという意識が少しでもあるとしたら怖い。

「新大陸」を発見したヨーロッパ人が、「野蛮なこと」をしている先住民を見て彼らは人間じゃないとか魂がないとか言って虐殺したのを思い出してしまう。

ポスト・ファシズムの今の時代、すでに2006年にフレデリック・グロという哲学者が21世紀の暴力状態にもう戦争という言葉を使うのをやめようと提案したことがあった

戦争という言葉は「西洋世界」が定義した

「名誉、勇気、犠牲などの倫理を前提に政治的な目的を持ち法的枠内で行使される公で正当な(!)武力闘争」

のことだったそうで、今はもうそれは通用しないというのだ。

テロリストの攻撃も、恐怖により疑心暗鬼を煽り内戦を誘導したりカオスを作り出すのが目的だ。

でも、攻撃された国が「すわ、戦争」という時は、昔の定義通り、「正当な戦争」と言いたいのだろう。

すべての「戦争」は「防衛戦争」だというのはこの定義に合っている。

そして、「征伐された側」は、正当でもなく、ひょっとして「人間の兄弟」としてさえ認めてもらっていないのかもしれない。

そういう違和感は別として、この特集には興味深い記事がいろいろあった。

ジハードと十字軍の関係もその一つだ。

11世紀に起こった十字軍などアナクロニックな話だが、9・11の後のブッシュ大統領も口にしたほど、「教養のない人」の頭に安易に浮かぶ言葉である。

今回のテロの犯行声明でISは三度も十字軍に言及した。

パリはヨーロッパで十字軍の旗を掲げる首都であり、犠牲者は十字軍兵士であり、ISは十字軍の先頭に立ったフランスを罰したのだ、というレトリックである。(続く)
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by mariastella | 2015-11-19 01:54 | フランス
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