L'art de croire             竹下節子ブログ

フランスの州議会選挙の結果について

フランスの州議会選挙の結果についての感想を聞かれたのでひとこと。

極右国民戦線FNがコルシカを除く12州のうち3州で第1回投票でトップに立ったのが、第2回投票での与野党協力(というか与党社会党PSが共和党Repに譲った)が効を奏してすべて落選した。

投票率も上がったので、フランス人は危機になると立ち上がる、と満足の声も出ているが…。

実際は、勝利した党が議席の25%を自動的に得て、残りの75%を、得票率で分ける。

例えば40%の得票率で勝った党は、25%と、残り75%のうちの40%である30%をもらえるので55%という過半数の議席をもらえるわけだ。

だから、どの州議会でも、敗れたとはいえFN議員が躍進するわけで、FNを阻もうとして社会党が自党候補を引っ込めた州では社会党は今回の選挙による議席はゼロということになる。

ブルゴーニュなんて、RepとPSとFNの得票率は事実上三分の一ずつである。
PSがまともに勝利したのは現役の防衛大臣が率いるブルターニュだけだ(何しろ「戦争」中だし」)。

この様子を見ると、2年後の大統領選にはまだ「FNのガラスの天井」というのが機能しても、7年後にはRepやPSの側によほどの改革がないとFN大統領が生まれてもおかしくはない。

唯一の救いは、RepやPSが改革する速度や効率よりもFNが「普通の保守派」に舵を切ることの可能性の方が大きいことだ。

もちろんRepやPSは、FNを共和国の敵、極右ファシスト、とレッテル付けする努力を惜しまないのだけれど、マリーヌ・ル・ペンは父親の極右政策からすでに大きく「共和国」派でゴーリスト(ドゴール派)だという方向に看板を塗り替えていて、父親とけんかし、罵りあって互いに親子の縁を切ったりしている。マリーヌによるその「脱極右キャンペーン」がある程度成功しているからこそ得票率が増えているのだ。

今、創立者ジャン=マリー・ル・ペンの流れで超保守派を率いるのはわずか26歳の孫娘マリオンだ。
若くて金髪で綺麗なマリオン、普通ならその外見も敵の攻撃の俎上にのせられそうだけれど、開票後の会見を見ても、堂々とポピュリズムに応え、若さや外見もしっかり武器にして何のコンプレックスもない。知性があるかどうかは別としてアジテーターとしての才能があるのは確かだ。
このマリオンはカトリックの保守団体にも覚えがよくて、そういうイメージを払拭しようとしている叔母のマリーヌをいらいらさせている。

まあマリーヌであれマリオンであれ「ル・ペ」ンの名を掲げている限り、創立者の金や地盤や権益から離れられないのは当然だが、今回アルザスで敗退したフロリアン・フィリィポなどはFNの新しいタイプである。

この人はいわゆる共和国的な環境(両親が公立校学校教師)で地方の出だが、超優秀な学歴を持つ。知性によって道を切り開いたタイプだ。30代前半と若い。
この人は最近メディアでFNの代弁者としてディベートに参加していたが、言っていることはともかくとして、たいていのPSやRep側の参加者よりもはるかに頭がよいのが見てとれた。というか相手の頭の悪さ、整合性のなさを目立たせた。

JM・ル・ペンの頃のFNには絶対に合流しないタイプで、この人を取り込めたのはマリーヌの戦略の成果だろう。ただ、見た目がなんとなく、私の偏見の中でのすごく人種差別主義者っぽいFNという雰囲気なので警戒心をそそられていたけれど、実際は、いわゆる内向きの超保守という人ではない。

第一ゲイであることをカミングアウトしている。
離婚を繰り返しているマリーヌもカトリック教条主義者(最初の離婚前に三人の子を教条主義教会で洗礼を受けさせているが)とは近づけないわけで、二人共いわゆる「中絶反対」「同性婚反対」タイプのグループとのフュージョンはない。

フィリィポがFNに合流した最大の論点は経済政策とEUの問題で、それを別にすると、いわゆる「人種差別、マイノリティ差別の極右」というレッテルからは外れている。
だからPSやRepがいつまでもJM・ル・ペンを攻撃していた頃と同じ攻撃の仕方を続けていると、だんだん現実と乖離してくる。フィリィポのような人材をまともに組み入れることができるほどの見識が他の党にあればいいのにと思うほどだ。

まあFNがもっと進出するリスクのある2022年の大統領選の頃は、党の名前も変えてフィリィポのような若手がリーダーになって事実上の「共和国主義」政党になっている可能性はあるわけで、そんなことに希望を託さざるを得ない今の状況がかなしい。

頭がよさそうでかつ誠実であるという印象を与えるのに成功しているのは北の地方で今回マリーヌを破ったRepのグザヴィエ・ベルトラン、若手のブルーノ・ル・メールなどで、今や「賢者」風なのはアラン・ジュッペ。

PSはCOP21の茶番劇や、協定成立に感涙を流してノーベル平和賞候補などといわれている外務大臣のファビウスも今さら見ていていらいらする。

パリのテロのおかげで、COP21という外交劇でフランス政府に恥をかかせる勇気は世界のどこにもなかったわけだけれど、大切な問題は何一つとして解決していない。

そういえば今回、独立派のナショナリストが勝利したのはコルシカだけど、コルシカって、歴史的経緯からして、今でも他の地方よりも大きな自治の権限が与えられているんだそうだ。

沖縄とはだいぶ違うなあ。
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by mariastella | 2015-12-15 01:17 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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