L'art de croire             竹下節子ブログ

『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』その他

年末年始に日仏を往復した機内でみた映画の続き。

『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』

近頃多い熟年俳優が主人公の映画。だから世代的にもシチュエーション的にも共感できる。
モーガン・フリーマンとダイアン・キートンという組み合わせだからうまい。

どちらも私よりは少し上の世代だけれど、原作の小説ではこの2人はもっと年とっている設定のようだ。
私の周りにも、年とったので階段のない家に引っ越したいとか病院の近くにとか子供たちの近くにとか、住み慣れた家を売りに出す人たちがいるし、それでもうまく買い手がつかなくて、思い直してそのまま何となく住んでいるケースもあればついに動けなくなって施設に入った人もいるので、なんだかリアルだし、身につまされる。

病院も遠くない都市や都市近郊の二世帯住宅に住んで子供や孫世代との関係も良好という人以外はいつか突きつけられる問題だ。

白人教師と黒人アーティストという一見対照的なカップルの生き方も、愛犬が「かすがい」になっているのもなんだか親近感がわく。

変な話だけれど、一番私のツボにはまったのは、愛犬の治療に金をかけるかどうかということで、獣医の電話を妻とかわった夫が、成功するかどうか分からない治療はしなくていい、と獣医に言い渡すのかと思ったら、「できることはすべてお願いします」と言ったシーンで、これは、完全に、妻への愛の告白だなあと分かる。
この一点で、この夫婦の愛情の堅固さが確認できる。
妻は彼がこういうことをどこかでは分かっていたと思うけれどやはり一瞬は心配した。
その心理もよく分かる。
愛の告白は時々上書きしないといけない。

話は愛犬の容態に加えてニューヨークらしいテロ事件のせいで売買に影響が出るかどうかというところも、昨秋からパリのテロのせいで不動産事情が動いていることもあってリアルだ。

自分たちも決して裕福ではないのに弱者に向ける視線もやさしい。ほっとする。

バレエがテーマで興味があったけれどホラーは避けているので見ていなかった『ブラック・スワン』も見た。

なんかマンガチックなストーリーだ。要するに母と娘の葛藤モノなのだ。バレエそのものはそれほど見ごたえがない。

ホラーを避けている、と言えば、日本で、NHK出版新書の戸田山和久著『恐怖の哲学-ホラーで人間を読む』というのを買った。すごくおもしろそう。

いろいろな理由で見ていなかった2005年の『ブロークバック・マウンテン』も見た。
もう10年も経っていたのだ。
ヒース・レジャー、ジェイク・ジレンホール、アン・ハサウェイ、ミシェル・ウィリアムズという4人の存在感が半端ではない。
『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』のアン・リー監督と言うのもあらためてすごいなあと思う。

私の中でどこかゲイ・カウボーイ・ムービーという先入観があったのだけれど、女性たちの思いや家族の関係、親子や義理の親子、裏切りや離婚も含めて超・普遍的なテーマが満載で、すごくよくできている。

20年にわたる大河ドラマかと思うと原作が短編小説というのにも驚きだ。

だから凝縮して強度があるのかもしれない。

主人公の2人が20歳から40歳までなのだけれど、俳優2人は撮影当時20代の若さだった。

亡くなったヒース・レジャーは最初から何か老成した感じだし、ジレンホールの方は最初から最後まで青年みたいで、ふたりの間では時がとまっている。

このアメリカ中西部が主舞台出1963年から1983年の20年という時代と場所は私とかけ離れているのである意味想像もつかないけれど、だからこそ、人が人生の選択をする時の責任や失敗や後悔や卑怯さなどの普遍性が胸に迫って苦しいくらいだ。

人生の岐路では選択だけではなくて遂行の意志を絶えず更新するのが大切なのかもしれない。
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by mariastella | 2016-02-03 23:53 | 映画
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