L'art de croire             竹下節子ブログ

宮川香山展

「日本陶器王」と呼ばれた「宮川香山」展をサントリー美術館に観に行った。

横浜の外国人居留地に住んで外国人の嗜好を探るなど輸出のために戦略的であったわりに強烈な個性で、独創的な高浮彫作品を残した。

外国人は金を多量に使う薩摩焼を好んだが、それでは高額になり、金が国外に流出するので、立体的な造形で造形の妙を極めたというのだ。

しかも、確かに、金箔、象嵌、螺鈿など光物が少ないかないせいか、キッチュすれすれなのに品がある。

枯れ葉や枯れ木、朽ち花も好んで取り上げるので倒錯した侘び寂びの味わいさえもあるのだ。

絵柄には季節ばかりでなくストーリーもある。

西洋風の神話や宗教モチーフを使わない代わりに、「あの世」が百鬼夜行の姿で現れるのも興味深い。日本の「神々」をテーマにしないのも、キリスト教国での受容を考慮したかららしい。

動植物の生態までリアルにかつ過剰なまでに埋め込んだ作品の展示を見ているとまさに、Cabinet de curiosités (キャビネ・ ド・キュリオジテ)に迷い込んだような印象だ。

キャビネ・ ド・キュリオジテは、ヨーロッパの貴族や学者、文人が15世紀以来の大航海で「異国」で収集したものを集めた博物趣味の珍品陳列室で玉石混交の宝箱だった。動植物の標本や剥製も中心にある。

いわゆる「近代」にそれはすたれたが、宮川香山が提供した壺や花瓶は、彼らの博物展示趣味をどこか刺激した面もあるのではないだろうか。

欧米で人気を博していた中国陶磁器に対抗して出発したとはいえ高浮彫作品は、もう「陶磁器」という範疇を超えている。

巨大な作品が精緻なモチーフで埋め尽くされているのは圧巻で、香山は天才というより巨人のようだ。

有名な「猫」は耳の中の血管まで浮き出ているし、ハチの巣の中でうごめく幼虫なんていうものまである。単眼鏡を持参して見つめる人もいた。

香山の最大のコレクターで研究者という田邉哲人という人も驚きの人物だ。国際警備会社を経営し、スポーツチャンバラの創始者だそうだ。

絵や書や陶芸作家でもあるようで、こんな桁外れの人がやはり桁外れの香山と出会ったことに感謝したい。
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by mariastella | 2016-04-16 01:36 | アート
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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