L'art de croire             竹下節子ブログ

足利のフラワーパークと栗田美術館

5月3日、足利市のあしかがフラワーパークの大藤まつり2016に行った。

水墨画のための撮影について行ったのだが、うすべに藤、むらさき藤、長藤、八重の藤、白藤とさまざまな種類があり、ひとつひとつの繊細さとアンサンブルの濃密さ、幹や枝ぶりの臆面なく野性的な力との取り合わせの妙に感心する。
先日の奈良でも春日大社の近くの藤棚や山藤など見せていただいたので今年は藤を満喫できた。フランスでも満開の季節だけれど、私のうちの庭の藤はなぜだか咲いたことがない。

フラワーパークはすごい人混みでそれだけで疲れたけれど、帰りに寄った栗田美術館は広々としていて気持ちがよかった。
さまざまな植物があるのにここには藤の花はない。

この栗田美術館のたたずまいは独特で、何か新興宗教の「聖地」みたいな雰囲気だ。

山の斜面にある広大な敷地に立派な建物がいくつも建っている。
ここにある個人の収集品が伊萬里と鍋島の二種類だけというこだわりにも心打たれる。
しかも、場の雰囲気と展示品の迫力だけで十分饒舌で「濃い」のに、それをさらに「言語化」しているところがすごい。

本館入り口手前の足元には

「この美術館には陶磁器に生涯をかけた栗田英男が深い愛情と強靭な意思をもって蒐めた魂の記録が隅々にまで色濃く執拗に燻りこめている」

と彫られた銘板がある。 

美術館が自ら、「隅々にまで色濃く執拗に燻りこめて」などと表現するとは驚きだ。

カタログの序文にも栗田英男館長の言葉があるのだけれど、それも

「風格ある伝統の町に、3万坪余の景勝の地を選び、自然を生かした作庭の中に、昭和33年以来幾多の辛酸を経て今も感性に向かって精魂を傾けている。」

「自ら蒐め、自ら設計し、自ら飾り付けたもので、伊萬里、鍋島の作品以外に対しては、一顧だにせざるところが他の美術館と根本的に異なる」

「この美術館全体が、伊萬里、鍋島に対する至純の熱情を傾けた城郭なのである。」

「私が野火の熱く朱く盛んなる如く情熱の限りを作りあげたこの美術館」

などと、個人の思い入れが何の抑制もなく過剰に披露されている。

そしてその執念というか信仰みたいなものが実際、広大な場所に独特のオーラを与えているのだ。

展示作品の格調の高さに対して、謙虚や奥ゆかしさとは対極の「言葉」が衝撃的な不思議な空間だ。

先日の宮川香山展で堪能した陶器類も輸出用に高い工芸性を発揮していたわけだが、江戸時代の伊萬里、鍋島を見ていると、「鎖国」時代の日本がオランダの東インド会社を経てずっと「西洋好みの陶磁器」を大切な輸出品として育て発信していたことが分かる。

すでに中国の陶磁器を熱心に輸入していたヨーロッパ人は、17世紀初めには日本の陶磁器は中国のそれに比べてまだ「揺籃期」にあると言っていたそうだ。
それが、17世紀末にはすでにマイセンが伊萬里の摸作をするようになっていたというから、日本のテクニックとデザインの発展の急激さがよく分かる。

幕末になってからあわててパリ万博のために戦略を立てたわけではない長い歴史があったわけだ。

ドレスデンには今もこてこてのバロック、宮川香山もびっくりの作品コレクションがある。

(今ドレスデンの伊万里コレクションで画像検索したらこういうのが出てきた。どこの誰のものか知らないけれど、すごい。)
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by mariastella | 2016-05-08 21:43 | 雑感
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