L'art de croire             竹下節子ブログ

三澤洋史さんとスキーとバッハとダンス

最近めぐり合ったブログに指揮者の三澤洋史さんのものがある。

パリにも縁のある方で、勝手にいろいろな共通点があると思ってしまった。

東京カテドラルで聖歌隊の指揮をなさっていて、ブログの中には私の親しい人の名も出てきたからだ。

「いつくしみの特別聖年」の勅書の訳についての記事
など、私が思っていたことを丁寧に書いてくださっていた。「キリスト教信仰の神秘」というのを「キリスト者の信仰の神秘」というのはちょっとした違いのようだけれど違和感が半端ではなかったのだ。だから暮れに東京の巡礼指定教会を巡った時も、免償に必要な祈りなど、全部フランス語のものを持参したくらいだ。

それで遡ってブログ内検索をしていたら、三澤さんが情熱をかけているもので私と全くかけ離れているものにスキーがあるのが分かった。で、スキーに関する膨大な記事はスルーしながら読んでいた。

ところが、突然、バッハについての記述が出てきた。

(以下引用)
バッハはコブだ!
■コブを滑っていると、バッハのモテットを思い出す。長い音の後に小節線を越えてタイがある場合、その小節線を越える瞬間の浮遊感と、その後16分音符で戻ってきた重力を確認する着地感が、コブをトップから越える時のちょっとジャンプする感じと全く一緒なのだ。
■小節線を越えるタイは、バロック音楽の場合、ロマン派音楽のようにベターッと伸ばしてはいけない。さりとて完全に切り離してもいけない。小節線をジャンプ台やコブのトップのように捉えて、小節線のところで重力を解き放つ。でも声自体は次の16分音符に細いながらつなげる。16分音符は、着地の重力を大きく感じながら、かなりはっきり輪郭を出して歌われなければならない。
■この浮遊感と着地感がバッハ演奏の命でもある。そして、それを表現するためには、支えを初めとする完全なる声楽的テクニックがないといけない。東京バロック・スコラーズが追求しているのは、その表現方法なのである。
■バッハの密な対位法的音楽は、手法としてはパレストリーナから受け継いだものだが、そこに加えられた調性的力学と爆発的なリズム感とはバッハ独自のもの であり、パレストリーナを整地とすると、バッハはコブそのものなのだ。あるいはパレストリーナを真空の宇宙空間での抽象的運動だとすると、バッハは重力や 遠心力を最大限に利用したエキサイティングな現実運動なのだ。バッハを理解しようとする人は必ずコブを滑らないといけない・・・・とまでは言わないが、僕にとっては、今や「この感覚なしに三澤洋史のバッハは語れない」のだ。

(引用終わり)

これは、私がバッハのダンス曲の長音の扱いでダンスのステップをイメージするのとまったく同じだ。

このことをチェロの藤原真理さんのバッハについて書いたことがある

で、藤原真理さんも大のスキー愛好家なのだ。

私は自分が転んで肩を痛めたトラウマもあって、もうスキーとかスケートとか、過去に転んだ経験のあるスポーツは一切やらないと決めていたので、真理さんも気をつけてね、といつも言っていた。

真理さんにとってのスキーはストレスの管理、リフレッシュとしてすごく大切なものなのだろうとは思っていたけれど、三澤さんのこの記事を読んで、バロック・バレーをしていなくても、スキーにおける浮遊感や体重のかけ方のコントロールによってバッハの弾き方が体感的に分かるんだろうなあと納得がいった。

おもえば、バロック・バレーで体重のかけ方や操り人形の着地感覚など、うまくコツをつかむのはそう簡単ではない。

ダンスの苦手な楽器奏者が何年経ってもこれでは意味がないと思うような踊り方を続けている場合もある。

それなら、確かに、起伏があり、摩擦の少ない雪に体重をのせていくスキーをやっている方が、バロック音楽の体感を理解しやすいだろうと思う。

それにしても、重力の中で体を動かすこと、と、バロック音楽の身体感覚が同じものであり得るということをここまで意識化しているなんて、三澤さんってすごい人だなあと思う。

その上に霊性とか、自分の生き方まで一貫していて、尊敬の念がわいてくる。

「猫派」でないのがちょっと残念だけれど・・・
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by mariastella | 2016-05-11 00:50 | 雑感
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