L'art de croire             竹下節子ブログ

François Desagnatの『Adopte un veuf(男やもめと暮らす)』。

芝居に続いて、フランスらしい映画を観に行った。

François Desagnatの『Adopte un veuf(男やもめと暮らす)』。

主演がアンドレ・デュソリエというのが好みだ。

役者としても好きだけれど、最近、自分の周りにいる男たちと同年輩の男が主人公である映画に興味が湧く。

若い頃には「70歳の男」というのは祖父とか父親のカテゴリーの他者だった。

今私の周りにいる60代から70代の男たちの多くは、若い頃から知っている人たちで、「70歳の男」ではなく「70歳になった男」である。だからデ・ニーロの『マイ・インターン』だの『ニューヨーク眺めのいい部屋売ります』などもおもしろかった。

もっとももそんな映画でも、ヒロインの方は若いことが多い。
それは嫌ではない。私は脳内オッサンの部分があるのでどうせスクリーンで眺めるなら若くて好みの女優を見たい。自分のことは外から見えないので、自分も「高齢者になろうとしている元若い女性」だという認識はないし、昔から知っている同年輩の女性たちもみなまだ若くてきれいに見えるので、「年を重ねたことによる哀愁」というのは感じられない。

でも、男たちの哀愁は時々半端ではない。

この映画の主人公であるリタイアした産婦人科医のように突然伴侶に先立たれた男はなおさらだ。
産婦人科医であるのに妻が子供を持てない身体だったという設定もむなしさや寂しさを加える。

そこに登場する気のいいパン屋の女性や、底抜けに明るい女子学生や根暗の女性看護師など、こちらは誰も私の好きなタイプの女優はいないのだけれど、彼女らのデリカシーのなさやエネルギーが傷心のやもめに少しずつ命を吹き込んでいく。

ひとりで広いアパルトマンに暮らすユベール(デュソリエ)のところに転がり込む女子学生役のBérengère Kriefはいわゆるお笑いの舞台芸人でパワフルだが、その過活動ぶりが演技なのか天然の持ち味なのか分からない無邪気さを併せ持つ。

予定調和的な筋運びのコメディなのだけれど、ユベールは、この「はれた惚れた」で暮らす若い人たちの間で別世界の人間のような立ち位置になっている。
まさに、「70歳のやもめ」でしかなく、決して「70歳になった男、やもめになった男」、ではないのだ。

私の目にはユベールが過去も含めた「男」に見えるので、その断絶ぶりが不自然なくらいだった。

デュソリエの作品を自分も彼も若いころから同時代的にたくさん見てきているからそう思うのかもしれない。

今カンヌ映画祭の最中で華やかな話題があふれているけれど、当分は映画も見ないでまじめに仕事をすることにしよう。
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by mariastella | 2016-05-17 00:14 | 映画
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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