L'art de croire             竹下節子ブログ

イギリスのEU離脱をフランスから見る その4 (追記あり)

BHL(Bernard Henri-Lévy ベルナール・アンリ=レヴィ)は、アメリカかぶれの新自由主義野郎、という面があって、イライラさせられることも多いのだけれど、6/26-27付のル・モンド紙に掲載された怒りの文はカタルシスを得られて楽しかった。
ネットでは全文見られないのだけれど最初のところだけリンクしておく。

最初から最初までこういう調子で、この問題についてのインテリ・ゴーリストの典型的な反応なのだけれど、歯に衣きせないで書くとこうなるというのがよく分かる。

それにしても、第二次大戦ショックの後の「平和への誓い」というものの風化ぶりは日本もヨーロッパも似ていて怖くなる。

憲法九条やヨーロッパ共同体の構想は、ともかく、もう戦争はしない、したくない、というその悲痛な思いに基盤があった。

しかし、戦勝国(フランスはドイツに占領されていたのだからねじれているので別)は厳密に言ってその後悔はなく、「正しい戦争に勝って悪の手から世界を救った」くらいに思っているので、その悲痛さは共有していない。

で、核戦争の恐怖を煽りながら、軍産共同、モラルのない自由競争が進み、敗戦からの復興に成功した国々もそれに同調し、いつのまにか、本当にいつのまにか、何につけても、富裕層をさらに富裕にするシステムの強化に向かった。

憲法前文や九条の精神だとか「ヨーロッパを二度と戦争のないユートピアにする」悲願などは「それ、なんだっけ?」の世界だ。

ヨーロッパの場合、そんなヨーロッパを初心に戻すよりも、「NO」と言ってしまう方がはるかに楽で、それを煽ることで利益を得る者がいる。

サッカーのユーロ杯は、今夜がイングランドと小国アイスランドの決勝トーナメントで、奇跡が起こらない限りイングランドが勝つだろう。

アイスランドは「Brexit」を望んでいる、というジョークが聞こえてくる。

厳密にいうとBrexitはイングランドでなくグレートブリテン全部だけれど。

フランスではBrexitに気をよくした極右や極左が今度はうちも「Frexit」と叫んでいるけれど、ユーロ杯から離脱するのは開催国として嫌だろう。

イングランドのフーリガンとは違って、陽気で礼儀正しいので有名なアイルランドのサポーターたちは、26日にフランスに敗れて去って行った。

次の日曜日、準々決勝でフランスが戦うのは、今日のイングランドとアイスランド戦の勝者である。

予想通りイングランドが相手となると、おもしろくなる。

BrexitかFrexitか、どちらかがユーロ(杯)から離脱するからだ。

イングランドはサッカーの発祥地、

フランスはユーロ杯の開催地、

近頃の政局やナショナリズムが報道にどう影響するのかちょっと楽しみだ。

「離脱しないで生き残って一番になる」のが偉大だ、

という価値観が共有されている世界に本当の平和が訪れるのはいつのことだろうか。

(追記 : 番狂わせで、先ほどアイスランドが2-1でイングランドに勝った。メディアは予想どおり、一週間で二つ目のBrexit、イギリスがユーロから離脱、と形容していた。これで、イングランド対フランスの準々決勝はなくなったからサポーターの無用な興奮はなくなるだろう。私は試合そのものには興味がないのでArteでクロード・ミレールの遺作『テレーズ・デスケルー(邦題:テレーズの罪)』を観ていた。仮面夫婦になっても日曜に教会だけは行くとか、幽閉した後は教会に行くのを免じるとか、完全に別れてからも大家族だから葬儀や結婚式で教会で娘に会える日があるだろうとか、教会へ行くという形と信仰とがまったく乖離しているブルジョワ一家の悲劇が身につまされる。フランスでは19世紀末から20世紀初めにかけてのブルジョワ家庭ほど女性が抑圧されていた時代がない。不幸や絶望の原因はいつも多様で、その行きつく先の闇は似ている。)
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by mariastella | 2016-06-28 00:45 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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