L'art de croire             竹下節子ブログ

アントワーヌ・グリーズマンとエンゴロ・カンテ

フランスで開催中のサッカー・ユーロ杯のフランス・チームの中で近頃のフランスの本音をうかがわせてくれる若いふたりがアントワーヌ・グリーズマンとエンゴロ・カンテだ。

ベンゼマなどモラルが悪いとされたりチームワークを乱しそうだとされるスター選手の代わりに新鮮な若手選手が活躍しているのだが、ジダンの時代などとは様相が違う。

最も注目されているのが共に1991年3月下旬生まれのアントワーヌ・グリーズマンとエンゴロ・カンテ。

グリーズマンは金髪碧眼風の伝統的なフランス人の風貌。

アルザス風の名前で、マコン生まれだが、母方の祖父がポルトガルのサッカー選手だということだ。
特徴は175cmとサッカー選手にしては小柄でしかもどちらかというと華奢な感じであることだ。
バスク生まれのスペイン人の奥さんも小柄で華奢な感じだ。

そして、まさに、その華奢な感じ故に、フランスのどのクラブからも入団拒否されて、ジュニアの時からスペインに渡ったという。

だから自分はスペインに育ててもらった、という感じだ。

スペインに生まれてフランスに帰化した首相マニュエル・バルスについて話題をふられた時にバルスのことを知らなかったことでも有名?だ。

ダンスをするようにプレイする、子供の用に楽しそうに、無邪気にプレイすると言われていて、「足を動かすだけ」というような答え方をしたことでも知られている。コンプレックスもないしナショナリズムもない。

一方のエンゴロ・カンテは、マリとの二重国籍だ。

フランスは共和国普遍主義によって人種別の公の統計がないように逆差別なども公にはないが、サッカーの世界は別で、人種別のクォータ制があるという。

そこにあるのはしっかり人種差別的発想で、黒人は、知的なプレイはできないが体格、体力、運動能力に勝る、という先入観が支配しているらしい。

でも、カリブ海の海外県の黒人なら問題ないが、旧植民地を中心とするアフリカとの二重国籍の黒人は、アフリカ・チームに招聘されるとそちらに行ってしまうかもしれないのでコストをかけるのに躊躇される場合があるという。

ユーロ2016のフランス・チームの23選手のうち10人が、アフリカ(北アフリカも含む)との二重国籍を持っている。

エンゴロ・カンテも以前マリのチームに招聘されたがフランスを選んだ。

おもしろいのはグリーズマンと違って、黒人だから「大きくて強くなる」と見込まれてジュニア・クラブに受け入れられたカンテが、169cmと、グリーズマンよりも小柄に留まったという結末だ。

この2人の若手の活躍は、偏見やら差別や、それによって屈折した影を感じさせない。

そういえば、グリーズマンは2012年の大切なナショナル・チームの試合の前夜にナイト・クラブに出かけたせいで14ヵ月の出場停止処分を受けたことがあるそうだ。

この2人が屈託なく力を発揮してスポーツと金とナショナリズムとマーケティングが癒着しているシステムに新風を吹き込むなら、日曜日、フランスがアイスランドに勝つのも悪くない。
[PR]
by mariastella | 2016-07-01 23:56 | フランス
<< 精神の健全さとは その14 「民主主義」をフランスから見る >>



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
以前の記事
カテゴリ
検索
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧