L'art de croire             竹下節子ブログ

グリーズマン(グリエーズマン)・フィーバー

昨夜マルセイユであったユーロ杯準決勝でフランスがドイツに公式戦で何十年?ぶりかに勝利したというので、深夜まで通りがうるさかった。

前にも記事にアップしたグリーズマン(フランス語ではグリエズマンㇴに近い)が2点をあげたから、今朝もどのニュースもこの快挙についてばかり。

ペナルティでぎりぎりに1点取った後のハーフタイムの解説では、前半ドイツが70%もボールを持っていて、彼らはテクニックも戦略も優れていて成熟しているから圧倒的に強い、と、みながドイツ優位を認めていた。

フランスにはリーダーがいない、と。

それでもフランスが勝ったのは、ともかく今回のチームはみな謙虚で連帯一番、という姿勢で、それはデシャン監督の人柄と経験の賜物のようだ。

そういえばこのデシャン、98年に優勝した時のキャプテンだったが、彼も、剛健な肉体派ではない。

体格、体力的にも優位なのはドイツ・チームだが、もうこのようなレベルでは、メンタルがすべてを決めるということの証拠だろう。肉体の強靭さだけではだめなのだ。

そういえば、やはり大活躍のゴールキーパーのロリスも、背は高いけれど顔もなんだかグリーズマンと似ていて少年っぽく、やせ形だ。
グリーズマンは相変わらず、まるで高校生のように無邪気で可愛く、シンプルで、リタイアした有名選手を含めて解説者やレポーターが「彼は僕のアイドルです」と口にした。

アイドルとは崇める「偶像」だ。

今朝のドイツの新聞には

「昨夜、神は我々の側にはいなかった。フランスの側にいた。その名は、グリーズマン。」

とあって、「神」に昇格していた。

フランスは基本的に「神」を口にしないのが伝統だから「アイドル」となったのもおもしろい。

グリーズマンのおかあさんは、フランスに75万人いるポルトガル出身だから、ポルトガルとの決勝は微妙なのではないかということももちろんなく、スペイン・アイデンティティの強いグリーズマンは、スペインのリーグ戦決勝で敗れたロナウド(ポルトガルチーム)に今回は勝ちたいという気持ちの方が強いようだ。

昨日の試合が感じよかったのは、反則がほとんどなく、互いにリスペクトする感じだったからだ。
それこそ力と力がぶつかって大きく重い方が相手を倒すというタイプのプレイによる勝利は、シモーヌ・ヴェイユの残した言葉に反する反応を招くだろう。

私がスポーツで一番苦手なのは、まさに「力」を称賛する傾向だ。

日曜の決勝については、「meilleur」が勝つと、解説者たちが言っている。

meilleurとはbetterのことで、「より強い」「より力がある」というのではなく「より良い」という意味だから好感が持てる。

日本人が国際試合に出る時は、何かというと、体格、体力などで劣ると言われがちだから、今回のフランスが、いかにも強そうな、そして実際に強い世界チャンピオンのドイツ・チームに勝ったということはいろいろ参考になるのではないだろうか。

グリーズマンもそのスピードが切り札だし。

昨日の勝利で一番うれしかったのは、シャンゼリゼやエッフェル塔前などに繰り出した人たちが実に楽しそうでいろいろな歌を歌っていたことだ。

2015年の1月以来のテロ、11月以来まだ続いているはずの「緊急事態宣言」、フランス人の陽気な生活に対するIS(彼らは音楽もスポーツも禁止する)の挑戦、などにかかわらず、スポーツでお祭りができて連帯もできることを多くの人が実感しただろう。

これがワールドカップなら、フランスと二重国籍が多いアラブ系アフリカ系の国との微妙な確執もあるのだけれど、今回は、二重国籍者たちもみんなフランス人、みんなヨーロッパ人、というリラックスムードがあるのも事実だ。

とにかく国の空気が陽気になるのはほっとする。

ユーロ杯の決勝の日、日本は参院選だけれど、「力」の称揚に惑わされない国でいてほしい。
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by mariastella | 2016-07-08 18:00 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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