L'art de croire             竹下節子ブログ

ポルトガルとサッカー、エデルなど

ユーロ杯でポルトガルが初優勝してからの24時間の反応を観察していたらいろいろ面白いことが見えてくる。

フランスサイドではやはり、1984年との比較が、世界情勢とグローバリゼーションと市場経済の鏡としてのスボーツ産業の肥大がある。

そのことについてはまた別に書くとして、今回は、ポルトガルの歓喜熱狂ぶりが尋常でないのを見て、サッカーがポルトガルにとってまさに国民的スポーツなのだとあらためて思った。

フランスでも、いわゆるライセンス数では、サッカーが200万、テニスが120万、馬術が80万と、サッカーが最大のスポーツだそうだが、ポルトガルはまた特別のようだ。

ロナルドの涙やコメントを見ても、彼が喜んでいるのは自分自身やチームのためよりもまずポルトガルのためだということがよく分かる。

一方、フランスのグリエズマンが悔しがっているのは、ひと月の間でファイナルを二回連続で負けた自分と、前回負けた自分のチームと今回負けた自分のチームのためで、「フランス」のためという感じではない。前回敗れたのもロナウドのレアルマドリード相手だったけれど、今回はロナウドは負傷して退場したので、直接ロナウドに負けたのではない。

フランス人としてのアイデンティティではなくてその時々のチームの一員としてのアイデンティティなのだというところがある意味でとてもフランス的だ。

試合に負けたフランス側から言うと、ロナウドが退場した時点で、フランスチームにこれで最大の敵が消えた、「勝った」という心の隙ができて、逆にポルトガルには必死の覚悟ができたという皮肉な結果になった。

負けた側の言い分では、準決勝から決勝まで、丸一日休息時間が少なかったのはハンディになる、準決勝は同じ日にすべきだ、という主張があったが、これはもう、テレビ中継というマネーが動くので不可能だ。

またグリエーズマンを使い過ぎて彼が疲れ果てていたというコメントもあった。スペインのリーグ戦でも直前まで出ずっぱりで、この一年間、最も多く試合をしている選手らしい。

それにしても、経済危機に苦しむポルトガルにとってのこの快挙と人々の喜びようを見ていると、嬉しさが伝染する。フランスにたくさんいるポルトガル人も今日はほとんど仕事に来なかったほどだ。
思わずおめでとうといいたくなるくらいの喜びようだ。

それがスポーツのいいところだなあと思う。

負けたと言っても、別に誰かが死ぬとか制裁されるとかではないから、負けた方も健闘を讃えられて終わるからだ。

汚職とか故意の反則とかがない限り、スポーツには確かに効用がある。

フランスにはカトリックの司祭でサッカーのコーチをしている人もあり、ペナルティを与えるシステムは「不正」を修復する模範だとコメントしていた。

フランスにとっては、このユーロ杯開催をテロもなく終えたことはポジティヴだった。
昨年の同時多発テロも今回の決勝の舞台だったスタジアム前のでの自爆が皮切りだったからシンボリックな意味は大きい。

そして、決勝まで行ったけれど結局勝たなかったというのもいいバランスだったと思う。

負けた相手が歴史的に確執の多いドイツやイギリスではなくて、ナポレオンか二度侵略したとはいっても、同じカトリック国だし、いろいろな変動はあったが一応は革命を経て共和国になった国どうしだし、フランスにもたくさんのポルトガル人やポルトガル移民がいる。
だから負けても変なナショナリズムには取り込まれない。

それに大きな声では言えないけれど、フランスチームにブラックアフリカ系選手が多かったことを揶揄する人がいたが、無得点同士の決勝戦の延長戦でポルトガルに勝利をもたらしたゴールを決めたのがロナウドではなくてポルトガルの旧植民地であるブラックアフリカのギニアビサウ共和国出身のエデルだったというのも何となくバランスがとれていてよかったなあと思った。

もうすぐ始まるオリンピックではどんな光景が見られるのだろうか。

4年後の東京オリンピックと政治と経済の関係はどうなるのだろうか、などとも考えてしまう。
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by mariastella | 2016-07-12 07:43 | 雑感
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