L'art de croire             竹下節子ブログ

ニースのテロについての言説

これを書いている時点では、トルコの軍部クーデターのニュースの方が気になっているのだけれど、またまたフランスのテロということで問い合わせていらした方もいるのでひとこと。

「緊急事態」がまた3ヵ月延長だそうで、テロとの戦いは長くなるのだから捜索権を拡大するために緊急事態を永続させよう、という政治家の声もある。それではもう「緊急」とは言えないかもしれないけど、あやしい場所を家宅捜索などする以外に日常生活は制限されていないので、事実上あまり変化はない。

普通のフランス人が制限をおとなしく受け入れるとは思えないし、ユーロ杯も革命記念日の行事も全部やっているのだから戒厳令というのではないのだけれど、外務省などから警戒されるので日本から来る人は本当に減った。

実は11月のテロも地方に行くと「おお、パリは怖い怖い」といわれるレベルで対岸の火事のようなのをブルターニュにいって実感したことがあるが、ニースや、いわゆる今の季節のバカンス地にいる人にとっては、いくら言われても「あれはパリの話」という感覚があったようで、今回はそのショックが大きいそうだ。

個人的には、フランスに来ていたカナダ人の知り合いがまさに14日にニースに南下してパニックの現場に巻き込まれ、被害はなかったのにカナダの新聞にまで名前が載ってしまったというエピソードがある。

他のニースに住む知り合いは、何も知らずに寝ていたのに、やはりカナダの親戚から夜中の3時に電話があって起こされてはじめて事件を知ったそうだ。

7/14を境に多くの人がバカンスに出かけ、いろいろな都市でいろいろなフェスティヴァルが開催される期間なので、パリはいろいろ「オフ」状態なので、変な言い方だけれど、ニースの事件に現実感がないという人が少なくない。

政治家では次の大統領候補として今一番人気のアラン・ジュッペが「万全の対策をしていたら今回のテロは防げた」などとツイートしたかなんかで、顰蹙をかった。

まあ、ユーロ杯や7/14のパレードなんかにはおそらく「万全の対策」がされていただろうし、テロが起こらなかったのだから、地方の夜の警備に不備があったというのは分からないでもないが、こういう「非常事態」の時に、政敵を批判するのはフェアでないかもしれない。

翌日に早速ニースのカテドラルで追悼のミサが行われて、それに嬉々として(?)参加したのがサルコジだというのも彼らしい政治パフォーマンスだ。こういう時にはカテドラルが、すべての犠牲者のために祈るので別に犠牲者の宗教と関係ない。集合的な悲しみを汲んでくれる受け皿として機能しているようだ。

その逆を考えると、たとえば、靖国で祀られている「英霊」にカトリックの信者が取り込まれているのはおかしい、というようなコメントを目にしたことがあるけれど、犠牲者、死者の冥福がいろんなところでいろんな形で祈られたってどこそこに埋葬するとかの具体的な強制がない限りいいんじゃないかと思う。

去年一月のパリのユダヤ人向け食品店のテロがあった後で、イスラエルの首相がやってきて、犠牲者の遺体をすべてイスラエルに埋葬すると宣言したのには違和感を覚えたけれど。

今の時点では今回のテロリスト(二児の父だが離婚)に関して、彼は酒も飲み、祈りも、ラマダンもしていなかったと、彼を知るムスリムがインタビューに答えていたから、イスラム原理主義過激派に転向したというタイプではなかったようだ。

でも、ISがイラクやシリアで拠点を奪われて行けばかえってあちこちに飛び火、というかガンの病巣のように転移する、だからISは叩かずに孤立させた方がいい、などという言説もあるから、今回のこともその一種なのかもしれないと思うと気味が悪い。

エコロジーの大会を控えた11月の時と比べて、ユーロ杯やシャンゼリゼのパレードを終えた後でバカンス気分という今回は報道のされ方や反応、政治家の思惑の方向性などがかなり違っているのでそれを観察するのは興味深い。
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by mariastella | 2016-07-16 07:33 | フランス
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