L'art de croire             竹下節子ブログ

パブロ・ネルーダの言葉でコロンビアのことを考えた

前回の記事でパブロ・ネルーダの言葉を引いたけれど、「春はいつか来る」みたいな言葉は「夜はいつか明ける」のように、今のご時世ではそれこそお花畑の言葉で現実味がないように聞こえるかもしれない。

でも、長い目で見るとこの世界で「隣人同士の殺し合い」は減っている。
規模は大きくなったかもしれない。
でも、隣村との殺し合いが隣の領主間の争いになり、二国になり、同盟国グループ間に拡がったりしたが、日本やフランスのような国で普通の人が命の危険に絶えず脅かされているというようなことはもうない。

だからこそ、世界中の人間が隣人同士として、協力して環境を保全しようなどというグローバルな潮流も新しく生まれている。

アルジェリアの内戦が続いた時、普通の人が自宅で寝ていてもいつテロリストに襲われるか分からなかった。それは軍事政権の「力」によって制圧されている。でも、「力」による抑え込みの「平和」が本物の平和でないことは誰でも知っている。

それでも、長い目で見ると力と力が争っていた地域にも「和解」が訪れ人々の喜びがはじけ、それを見ると平和がいかに望まれていたのか、平和の希求が共有されていたのかが分かる瞬間がある。

最近の例ではキューバで和平協定をしたコロンビアだ。

コロンビアの内戦は半世紀以上続いた。

26万人の死者、4万5千人の行方不明者がいる。

コロンビア革命軍(ファルク)が生まれたのはキューバ革命の五年後だった。

石油があり、ペルーと共に世界有数のコカイン生産国であるコロンビアで、ファルクはロシアのマフィアとも関係し、麻薬市場を制し、人質を拉致して身代金を得ることで膨大な活動資金を得ていた。

実効支配した地域では税金を徴収したりコカ栽培に課税したりもした。なんだかシリアにおけるISを彷彿とさせる。
ファルクはゲリラと呼ばれISはテロリストと呼ばれるが。

一時はファルクが政党をつくり議会政治の中での「民主的戦い」も試みられたがすぐに挫折した。
停戦協定も何度も失敗に終わった。
数多い人質の中には殺害された日本人の現地法人副社長もいるし、6年後に救出されたフランス国籍も持つイングリッド・ベタンクールなどもいる。

その彼らと政府が、国連も巻き込む3年以上にわたる和平交渉の結果、6月22日にキューバでようやく停戦協定にサインし、ファルクはすべての武器を国連に返上することになった。

その協定の写真は、ラウル・カストロの満面の笑みや、特にコロンビアの人々の歓喜する姿が印象的だった。
6月始めには6000人がボゴタの広場で平和のために裸になった
平和とは武器を捨てることなのだ。
すでに暴力沙汰や殺人の数はここ40年最低のレベルに下がり、経済は上向きになっている。

権力欲や覇権主義にかられる人、

イデオロギーや宗教原理主義の蒙昧の虜となって暴力革命を煽ったり恐怖政治を展開したりするグループ、

過去の恨みを忘れず報復を誓う人、

などはいつの時代でもどこにでも現れるけれど、本当は誰でも、隣人と「裸のつきあい」ができるような平和を望んでいるのだなあと思える瞬間だった。

中東にだってこのような日が来る、と思いたいし、それを多くの人が望んでいる、と確信する。
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by mariastella | 2016-07-19 01:24 | 雑感
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