L'art de croire             竹下節子ブログ

アメリカの大統領選とキリスト教 その2

これは前回の記事の続きです。

今回は民主党の大統領候補ヒラリー・クリントンとキリスト教の関係だ。

まず、ヒラリーはアメリカン・エスタブリッシュメントの平均的プロテスタントの一つメソジストの信徒でちゃんと日曜に教会に行く。

アメリカでちゃんと教会に通うタイプのキリスト教徒はほとんどがいわゆるpro-life(中絶の合法化反対)だけれどリアル・ポリティクスがたいせつなヒラリーはさすがに、先進国の潮流通りにpro-choiceなので、それを不満に思う人も多い。

(トランプの方は何につけ場合によって黒白を使い分けるのでもう誰も真剣に追及しない。一応戦略的にはpro-life。でも、キリスト教保守派のような「清廉な暮らし」をしていないのは明らかなので信じられていない。)

で、アメリカで教会に通うキリスト教徒にとっては、今は最大の関心がこの中絶の合法化か否かで、財政問題よりも上に来る。こういう人たちが有権者のざっと三分の一もいるのだから、日本やフランスからは想像もつかない。

こういう人たちにとっては、二千万人に達するとも言われているアメリカの不法滞在者を全部「追い出す」というトランプ風の排外思想にも賛否が分かれる。

不法移民労働者はアメリカ人のやりたくない仕事についているのがほとんどだから、その収入に税金を払っていないのが悪い、徴税すればいい、と思っている人も少なくないそうだ。

「人柄が大事で、バーニー・サンダースはもちろん、オバマもOK、共和党で候補に出馬していたベン・カーソン医師(アドべンティストの牧師の息子で中絶は絶対反対)も信頼できた」とイエール大学の歴史学教授でメノナイト教会のマーカス・ヨーダーは言う。

それに対して、「ヒラリーは嘘つき」というネガティヴ・キャンペーンは定着している。

そして、ヒラリーは副大統領候補に、中道右派を取り込むためにカトリックのティム・ケインを選んだ。

アイルランド系でイエズス会系の学校を出たヴァージニア州上院議員で死刑反対論者、銃規制は賛成、中絶合法化は「個人的には反対だが」政治家としてはpro-choice。

これは現在オバマの副大統領のジョー・バイデンがやはりアイルランド系カトリックであるのを踏襲している。

宗教的公正、というかバランスをとるのが必要なわけで決して偶然ではない。

だから、同じ民主党で左派で同じメソジストのエリザベス・ウォーレンを副大統領候補にしなかった。

エリザベス・ウォーレンなら弱者のために徹底的に戦うだろうから、ウォール・ストリートの覚えは悪そうだ。

彼女を「アメリカのジャンヌ・ダルク」にたとえる人もいる。

メソジストのエリザベス・ウォーレンは「福音書」をとても大切にし、ある日聖書を開いて自分の進むべき道を理解した。


それは「マタイによる福音書」の有名な箇所(25,34-40)である。

>>>そこで、王は右側にいる人たちに言う。『さあ、わたしの父に祝福された人たち、天地創造の時からお前たちのために用意されている国を受け継ぎなさい。
お前たちは、わたしが飢えていたときに食べさせ、のどが渇いていたときに飲ませ、旅をしていたときに宿を貸し、裸のときに着せ、病気のときに見舞い、牢にいたときに訪ねてくれたからだ。』
すると、正しい人たちが王に答える。『主よ、いつわたしたちは、飢えておられるのを見て食べ物を差し上げ、のどが渇いておられるのを見て飲み物を差し上げたでしょうか。いつ、旅をしておられるのを見てお宿を貸し、裸でおられるのを見てお着せしたでしょうか。いつ、病気をなさったり、牢におられたりするのを見て、お訪ねしたでしょうか。』
そこで、王は答える。『はっきり言っておく。わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである。<<<

ヒラリーも、大統領夫人だったころからすでに今の「オバマケア」のような万人のヘルスケア・システムの構築を目指していた。二人は実は似ているのだろうか。

でも、誰も、ヒラリーのことをジャンヌ・ダルクだとは、言わない。

日本で東京都知事になった小池百合子さんはジャンヌ・ダルクに例えられたそうだ。

ジャンヌ・ダルクはカトリックの聖女だ。

女性政治家の「戦い」において、宗教と聖女のイメージはどう関係するのだろう。

それは次回に。
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by mariastella | 2016-08-02 03:05 | 雑感
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