L'art de croire             竹下節子ブログ

イズー君はハンス少年か

水場が好きで洗面台や流しに来る猫の話はよく見聞きしていたけれど、うちの代々の10匹ほどの猫の中で、蛇口から水を飲むのが好きなのはこの夏ちょうど3歳になったイズ―君だけだ。

何でもお兄ちゃん猫スピノザの真似をして大きくなったのに、おなかを出して寝るのと蛇口の水が好きというのだけは生来のもののようだ。

私の書斎には洗面台がある。そこで顔を洗ったり歯を磨いたりする。
で、その蛇口から水が出る音を聞きつけるだけでイズー君が現れて体を半分洗面台の中に入れてくる。

で、私が水量を調節して、「ちょろちょろ」くらいにしてやったときに蛇口に口を当ててごくごくごく、と飲み始めるのだが、その半分くらいは下に流れている。

おもしろいのは、すぐに口を当てるのではなく、両手でかわるがわるに、蛇口、レバー、洗面台の回り、蛇口の後ろのタイル部分などを必死に「ざっざっ、」と掻き出すことだ。

飲んだ後も、洗面台から降りる前に周囲を丁寧にざっざっと掻くというか、こする。

爪で掻いた後で肉球でこするという感じだから、タワシとスポンジで掃除しているようなもので、おかげで洗面台の回りはいつもピカピカで掃除いらず。(まあその後でぬれた足でPCの上に座るのでラップトップの蓋は足跡だらけだけど)

その儀式を見ながら、最初は

「えい、えい、水よ、もっと出ろ」
「さあもう飲んだから水を止めなくちゃ、えい、えい、水よ。止まれ」

とアテレコをして、もちろん実際は私が出したり止めたりしていたのだけれど、最近別のことを連想するようになった。

それはオランダの少年の話。

今、ウェブで確認してみたら、こういうのがあった。
海面より低いオランダで、堤防の決壊を防ぐために、少年がひと晩穴に手を入れて防いだというあの美談だ。

で、イズーちゃんが毎回水を飲む前に見せる律儀な必死さのパフォーマンス。アテレコを変えてみた。

「あ、大変だ、水がちょろちょろ出てる。
何とかしなくちゃ、ざっざっざっ、
埋めればいいのかなあ、ざっざっざっ、
あ、まだ出てる、
じゃあ、今度はここだ、ざっざっざっ、
あ、まだ止まらない、
それならここは? 
ざっざっざっ、
大変だ、大変だ、何とかしなくちゃ、
これはもう、こうするしかない、
口を当ててぼくが全部飲んじゃえばいいんだ、
えい、ごくごくごく、
かあさん、早く来て、ぼくがんばるから・・・」

とアテレコしてみたらぴったりなのだ。

洪水を心配しているのか節水のために頑張っているのかは知らないけれど、なんだか、健気。
真剣さにじーんとくる。

同じ場面を見ていてもアテレコを変えるだけで、おバカ猫がハンス少年になって感動物語の主人公に…。
お涙ちょうだいの物語の作り方ってこんなものなのかなあ。

ひょっとして、私は暇なのか?
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by mariastella | 2016-09-03 02:11 |
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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