近所の太田記念美術館で「国芳 ヒーローズ 水滸伝豪傑勢揃」という展覧会を見た。
その中の特に、「通俗水滸伝豪傑百八人之一個」というシリーズを見ていて、シン・ゴジラってこれなんだと分かった気分だ。
いわゆる戦闘シーン、人と人が殺しあうシーンと違って、怪物、怪猫、大鷲、イノシシ、大イモリ、大蛇、大虎、鵺、九尾の狐、らと戦うヒーローは、ますますヒーローらしい。
画面いっぱいに怪物が広がり、ヒーローは文字通り身を呈して、至近距離で、取っ組み合いに近くなる。
日本人のヒーローは、悪と絡み合って 「成敗」する。
ゴジラに空爆するよりも、近づいて化学物質をゴジラを口の中に注ぎ込む方が日本人の好みなんだなって思った。
構図がまたすばらしい。
自分より大きく強そうで得体の知れない「悪」や悪の放つ色々なものと一体になっている。
鬼との戦いには稲光が画面をいくつにも切る。
ゴジラの吐く光線みたいだ。
こういう「ヒーロー」のイメージが日本人の原風景にあるのだろうか。
しかし、強さを愛でるのと勇気を愛でるのを区別するのは容易ではない。
シモーヌ・ヴェイユのいうように「力を拝んではならない」、というのは難しい、とあらためて思う。