L'art de croire             竹下節子ブログ

アメリカのオレンジ大統領誕生のニュースをフランスで聞く

別のことを書こうと思っていたけれど、起きたらトランプ大統領が誕生していたので、オバマの時の「最初のブラックの大統領」が、今回は「最初のオレンジの大統領」になる(映像で見るトランプの顔は確かにいつもオレンジ色だ)というジョークを思い出した。

このブログでは何度も、遠慮がちにヒラリーよりトランプの方がましかも、と書いてきた。マイケル・ムーアの予想があまりにも説得力があったので、トランプ勝利が予測できて、それでも、いざ大統領になったらちゃんとしたブレーンがついて暴言暴走させないように囲い込むだろうと希望的観測をつなぎたかったからだ。

サンダースが民主党候補になっていたら、選ばれていただろうに。残念だ。

8年前にヒラリーがオバマに敗れた時、KKKなどが「白人の女よりも黒人の男の方がまし」、としてオバマ陣営についた時から、アメリカの「ガラスの天井」というより深いところにあるミソジニーの根を感じた。その時と同じクリントンでは無理だろうとおもった。
健康問題もそうだけれど、彼女は「プロ政治家」すぎる。

「プロの政治家」で、政治人生のすべてを「大統領になること」に目標設定していた野心が見え見えすぎる。
そのイメージを多少なりとも「人間的」にするカードが

「夫の裏切りに耐えた」
「今は孫のいる幸せなおばあちゃんになった」

というふたつくらいしかないのは弱すぎる。

「バーベキュー・パーティを時々一緒にしなくてはならないお隣さん」としては、クリントンよりもトランプの方がはるかにましだ。

いいお隣さんの資質と大統領の資質は違うが、直接選挙におけるインパクトには影響を与える。

これから実際にどういう風にやるのかしらないけれど、選挙運動中にここまで暴言を吐けるというのは、もうピューリタン的な「政治的公正」の建前の時代がアメリカでは終わったということなのだろうか。

フランスだったら一回で葬られているようなことを次々言っていたけれど、先日のドゥテルテの記事でも書いたけれど、言い続けていたら、受ける方も慣れてしまうのかと思うと怖い。

日本との関係で、これで日本が「アメリカ離れ」して「真の意味での自前の平和」に向かうのか「平和の名のもとに自前の軍備」に向かうのかは分からないけれど、どちらも単独にはできないので他の国とのパートナーシップのあり方をじっくり考えなおす時が来たのだろう。

フランスはロシアの離脱、イギリスのEU離脱に続くトランプショックで、国民戦線(フロン・ナショナル)のトップがすぐに祝福し、次はフランスが続く番だと言っていた。

FNのナンバー2は、少なくともこれでアメリカとヨーロッパ間の自由貿易協定(TAFTA)はまとまらないだろうと祝福している。

2015年12月にフランスが主導したCOP21について心配する人もいる。

トランプは環境規制について、アメリカの経済を貶めようとする中国の陰謀だ、みたいな見当はずれなことを言っていたからだ。
でも実際問題として、トランプがパリ協定を覆すことはできないだろう。

またトランプは地元NYでは人気がなかったわけだが、もともとはインターナショナルで多様なニューヨークっ子であるわけだから、大統領になった後は、NYの「血」がバランス感覚を取り戻してくれるのを期待するとコメントした人もいた。

他に、民主党と共和党の大統領が定期的に交代すること自体はフランスでも二大政党のサラダボールの法則(混ぜた方がリスクは回避)と言われているので、悪くないという意見もある。

まあ、共和党内でこれほど分裂したのだから、まず内部調整の方が大変だろうけれど。

フランスの大統領選までも半年を切った。

社会党政権がすっかりネオリベのテクノクラート化しているのはアメリカと同じだったので、政権交代は望まれるところだが、トランプのような役どころはそれこそ国民戦線がやってくれるわけだから、フランス共和党では、アラン・ジュッペのような穏健派が今のところ一番人気なのでほっとする。

アメリカに比べたら(サルコジを除いて)みなエレガントに見える。

今回のことはフランスにとっていい教訓でもある。

そうはいっても州邦の集まりのアメリカと違って中央集権の強いフランスだから、トンでも大統領が出現したらダメージははるかに大きい。

トランプはデモクラシーの「多数決」で選ばれたわけだけれど、一応デモクラシーを受け入れている国のいいところは、インターナショナルなデモクラシーやトランスナショナルなデモクラシーもリスペクトしなくてはならないことだ。

言い換えれば、一つの共同体内でのデモクラシーは信用がおけないけれど、汎共同体、超共同体のデモクラシーとのすり合わせというストッパーがあれば、まだ現時点で「最良」のシステムだといえるかもしれない。

日本での反応はこれからネットで読んでいくつもりだ。ひとまず覚書。
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by mariastella | 2016-11-09 18:43 | 雑感
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