L'art de croire             竹下節子ブログ

フランスのトランプ効果 その5 

トランプ大統領誕生の特別番組をいくつか見た。

フランスでは仏共和党予備選が今月20日に行われる。

トランプ大統領誕生のせいで、社会党シンパの人たちも共和党の予備選に投票に行く、と言い始めている。

つまり、アメリカの民主党予備選で、本選のことを考えずに内輪の事情だけでヒラリーを選んでサンダースを落としたのが本選での敗因だとみなが感じ始めているということだ。

ほおっておいたらポピュリストのサルコジが大統領候補に選ばれるかもしれない。

そして極右のマリーヌ・ル・ペンとの決戦になったら、ル・ペンよりはましだということで皆がサルコジに投票せざるを得なくなるかもしれない、というのだ。

だから、一応現時点で優勢であるとされるアラン・ジュッペに投票してサルコジを予備選で振り落としておこうという。世論調査がどうあれ何が起こるか分からないからだ。

少なくとも私の周りには、今回のトランプ現象を反面教師にして、予備選への介入を目指す人がこうして出てきている。

サルコジも、内務大臣時代から大統領時代にかけて「暴言」を吐き続けてきた。
3番目の妻がいるところや、最初の妻との間に成人した息子が2人いるのもトランプと共通している。

今回の米大統領選に一番ぴったりの形容は「プロレスの興行」だといった人がいた。

すごい形相で殴り合っても、あとはけろりと握手しあえる。
すべては見世物だというわけだ。

フランスならはっきり言って遺恨を残すだろうし、暴言のレベルも違う。

日本なら石原慎太郎や橋下徹というキャラがいるけれど、首相レベルではやはり多少は慎みだか危機管理意識が働くような気がするし、フランスもサルコジのようなタイプはどこか蔑まれる。

エリートからだけではなく民衆からも蔑まれる部分があるのだ。アメリカとは本質的に違う。

トランプが当選した時のために用意していたのか、フランスの女性ジャーナリストがアメリカでトランプ支持の町々を訪ねて住民にインタビューするというドキュメンタリーがあって、先日放送された。

そこで、ジャーナリストはクー・クラックス・クランのメンバーのところにも招待されて、入会の儀式の形を教えてもらったしている。

トランプ支持者は、トランプはすでにすべてを持っているのだから、今回は純粋に自分たちのために立候補してくれたのだ、と確信をもって言う。

それに対してフランスのジャーナリストが、「でもそれはエゴだとか権力のためだとか思いませんか」と質問すると、「いや、私はトランプと直接会って話を聞いて誠実さに確信を持った」と答えていたのが印象的だった。

その他、アメリカに移住して国籍も獲得したフランス人の作家による分析も聞いた。

ホワイトハウス(パリの石切り場から切り出された白い石でできている)という「ホワイト」な場所にもう八年も黒人大統領の家族(オバマは白人とのハーフだがアメリカの定義的には黒人で、夫人と子供たちでさらに印象が強まる)が住んでいることがレイシストの白人の心に潜在的に耐えられなくなっているという指摘もあった。

すごいなあと思う。

それに、そう言って解説したり分析したりアメリカの田舎に潜入取材したりしているフランス人たちはみんな「白人」だ。

日本人のジャーナリストならKKKのメンバーの家に泊めてもらうなんて絶対できないだろうし、文脈が全く変わってくる。

それでも、フランスは公に人種や民族別の統計が存在しないから、ジャーナリストや識者はみな「普遍主義者」のスタンスで語っている。アメリカの貧しい白人たちの差別主義を揶揄している。

でも、私から見ると、こういうシーンでは結局白人同士だしなあ、などと感じざるを得ない。

アメリカよりもずっと中央集権的で大統領の権力も強く、副大統領もいないフランスの大統領選、

どうなるのだろう。

共和党予備選の一週間前に当たるこの日曜は、去年のパリの同時多発テロから一周年。

問題は、何ひとつ、解決していない。
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by mariastella | 2016-11-12 01:52 | フランス
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