L'art de croire             竹下節子ブログ

フランス大統領予備選 その2

昨日の深夜と今朝のニュースなど。

サルコジの敗北演説の落ち着き、格調の高さが称えられていた。
2012年の敗北の後も堂々といい演説をした。
この人のこういう演説の技量はすごいのだから、こういう調子で選挙戦をやっていたら結果が出たかもしれない、という人もいたくらいだ。
いやそれではサルコジにならない、などの声もある。

ナポレオンの国だなあと思う。

失墜してフォンテーヌブローを去るナポレオンの演説について『ナポレオンと神』に書いた。
引き際の美、というのがある。
でも、一年もたたずにエルバ島から戻った。

サルコジも現職大統領として2012年の敗北の後、今回の選挙運動中、またチャレンジして戦闘的なアジ演説を繰り返した。
まだ現役の大統領のままであるかのように。

やはり、ナポレオン・テイスト?

で、今度は、セント・ヘレナ島?

ナポレオンには二度目の敗北の時に、演説の機会が与えられなかった。
裏口から逃げだすしかなかった。
まあその後十分時間をかけて聖人伝のような回想記を残したけれど。

敗北、失脚の仕方には国民性ってあるなあと思う。

日本でもフランスでも、一種の「潔さ」が評価されるが、

日本なら、「消え方」は、討ち死に、切腹、出家だった。

フランスでも、「討ち死に」はヒーローの一つの形でナポレオンも望んだが、殉教者は崇められるので、敵はそれを望まない。

キリスト教文化圏には、イエス・キリストの受難と復活というモデルがある。
だから、「屈辱」を味わっても、敵に対して

「神よ、あいつらを赦してやってください、自分たちの愚かさが分かっていない、私の真価、私が神から遣わされたということを理解できないのですから」

と言って去っていける美学がある。

同時に、イエス・キリストやナポレオンが期間限定(イエスは40日、ナポレオンは100日)で「復活」したように、「復活」の可能性もにおわせる効用がある。

昨日の結果は、コペの0.3%がみじめだった。
数年前に、サルコジの後継者として党代表(UMP)をフィヨンと争ってひと悶着起こした男とは思えない。

それこそ「潔さ」とは正反対のあの騒動のせいで、コペもフィヨンも悪印象を残したから未来はないなあ、と誰もが思っていた。それなのにフィヨンの復活、というか新生を遂げた。
それに比べてコペはみじめだ。決定的にカリスマ性がない。

コペに比べると泡沫候補とされたポワソンですらもっと票を獲得している。
昨日の投票者の15%は保守・中道以外から来たという。
極右と極左がポワソンに投票した、と揶揄されている。

中道を唱えるジュッペが落選したら、バイルーら中道が独自に大統領選に立候補するのかどうかまだ分からない。
フィヨンは、まあ安定した「保守」を掲げているからかえって安心感を与えたと言われている。

また、ジュッベの立ち位置(左右をまとめ上げる)には、イデオロギー的にはマクロンがすでに立候補している。

ともかく、共和党はこれで二人の対決になったので、政策の違いやニュアンスがまな板にあげられるだろう。
「見た目」ポピュリズムの影響は少なくなるだろう。

木曜は二人の討論になる。

こうなると、サルコジがいない分だけ、かなりレベルアップすると思う。
「政治の言葉」としてのフランス語はアメリカ英語よりもはるかに強度がある。

「見た目」よりも「中身」の重要度が増すだろう。
でも、それよりも重要視されるのは、大統領の本選において、どちらが有利かということだ。

予備選でサンダースを落としたアメリカ民主党の失敗の教訓は記憶に新しい。

5月の大統領選でマリーヌ・ル・ペンが決戦に出てくるなら、右派の票も集められるフィヨンの方がル・ペンを切り崩すことができるだろう。
それ以外なら、中道の支持を得るジュッペの方が危機の時代のまとめ役としてふさわしい。

現職のオランドは、この予備選の結果を見てから、来年の大統領選に出るかどうか決める。
今は、社会党の分裂ぶりを見せつけられた左派の人々が「オランドよりジュッペ」、と言っているが、フィヨンとなると、左派がどこまでついてくるかは、分からない。
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by mariastella | 2016-11-21 18:18 | フランス
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