L'art de croire             竹下節子ブログ

聖ウラジーミル・プーチン

共産主義体制が崩壊していく経過においてロシアがそれまで人民の阿片などと蔑んでいた宗教にすり寄ってロシア正教を利用したのは理解できる。

でも、今(11/4)になって、クレムリンの前に17メートルのウラジーミル一世が右手に十字架、左手に剣を持っている彫像をプーチンが建てるとはね。

ウラジーミル一世は10世紀にロシア、ウクライナ、ベルラーシの揺籃の地であるキエフをキリスト教(東方正教)に改宗させた人物だ。
この像の建立に反対する人は多く、当初予定されていたの30メートルの高さを17メートルに縮小させた。

それまで最大のウラジミール一像はキエフにあった。
モスクワ市民はこの像を歓迎しなかったようだ。

ウラジーミル一世は、ウラジーミル大王、赤い太陽、聖ウラジーミルとも呼ばれる。

ビザンティン皇帝の妹と結婚する条件(他にもクリミア半島の征服や、眼病治癒もあり)で988年に正教の洗礼を受けて、正教を国教に制定した。
実質的に人々に帰属を強制した。

イスラム教も、ローマ・カトリックも、ユダヤ教も当時のキエフに「勧誘」に来たという話が伝わる。

イスラムは天国であてがわれる70人の処女のことを聞いて心を動かされたけれど、酒が飲めないのは問題外なのでやめた。

カトリックの使節団は断食の典礼のせいで追い返された。

ユダヤ教は、ユダヤ人が神のみ旨によってエルサレムを捨てて世界中にばらまかれたのだから説得力がないと言った。

正教は典礼が華麗なところが気に入られた。

プーチン大統領の名はウラジーミルだ。ウラジーミル一世は彼の守護聖人のようなものだ。
剣と十字架を持つ聖ウラジーミルの像は、聖プーチンの自意識を反映しているのかもしれない。

先ごろ青土社から出した『ナポレオンと神』には、ナポレオンが自分の権威を聖なるものにまで高めるためにどのような彫像を創らせたかについても書いた。

フランスでは『ウラジーミル・ボナパルト・プーチン』などという本が出ているし、今のEU会議がプーチンを批判する様子を、2世紀前にウィーン会議がナポレオンを扱った様子に例える人もいる。

そういえば、プーチンは、昨年だったか、ナポレオン戦争でのロシアの勝利の記念式典を行った。

無神論的共産主義から一転して政治と宗教がずぶずぶになったロシアのシンボルとして、聖ウラジーミルの巨大像が、人々を威圧する。
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by mariastella | 2016-11-24 03:02 | 宗教
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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