L'art de croire             竹下節子ブログ

アレッポの司教の証言の続きとベルリンのテロ

(これは前の記事の続きです)

アレッポの司教の言葉

「2011年に内戦が始まったときもアレッポの住民は自分たちには関係がないと思っていました。それが1年後に波及してきても、まだ政府軍が止めてくれると思っていました。

工場やアトリエの大部分が閉鎖され、失業が増え、給料もダウンしました。一日数時間しか電気が使えず、発電機につなぐのは大金がかかり、占領されてからは70日間も断水しました。

マロン典礼教会のカテドラルと教区教会の二つは中央地区の戦場にあって損傷が激しいのでミサは司教館のチャペルで行っています。2012年以来、信徒の三分の二が逃げていきました。その多くはもう帰ってくることがないでしょう。

私たちが逃げないのは、カトリック教会にはオリエントとオクシデントという両肺が必要だからです。
10人でも残れば教会全部を鼓動させることができます。

2015年にこのアレッポの司教に叙任された時、どうして私がこの十字架を、と思いました。
でもそれはこの町の信徒たちへのメッセージだと思って引き受けました。
内戦開始以来なかった祭礼をスカウトたちといっしょに行い、ムスリムの友人たちも祝福して
くれました。
信徒たちに食事を配り、手当てをし、家賃も助け、彼らが留まるようにできることは何でもしています。
でも、彼らから自分たちの息子は爆死しないかと聞かれると、自分の無力さを痛感します。

私は離れません。羊飼いは羊を見捨てません。もう金もないし、5分後に生きているかどうかも分かりません。私にとっては天に近づける機会です。殉教者は地を見ず、天を見上げています。」

うーん…。

ブッシュのイラク侵攻の時に処刑前のサダム・フセインを尋問したCIAのジョン・ニクソンの本の中で、

アメリカのイラク情報は何から何まで間違っていた、

9・11はサウジアラビア、エジプトなどが関係していてフセインはアルカイダとも関係がなかった、

サダム・フセインは問題はあったがあれほどの人物であったからこそ、部族が林立するあの国を安定して統治できていたのだ、

アメリカはサダム・フセイン軍の兵士たちを登用するべきだった(追われた彼らがISの中核になった)

などとあるのを見ると、あらためて、これまで中東で起こったことの意味を考えさせられる。

19日にはベルリンのクリスマス・マーケットでテロがあった。

テロリストは、なぜか、難民排斥、差別主義、イスラム嫌いの極右政治家などをターゲットにしない。
普通の市民に無差別攻撃をしている。その中にはムスリムももちろんいる。

9・11の以前から、中東を中心に、毎年多くのテロの犠牲者が出ていた。
今でも、テロの犠牲者の90%はムスリムで、テロ多発国は、パキスタン、アフガニスタン、イラクだ。

ドイツはメルケル首相が、移民100万人OKで統合できるなどと言っていたけれど、領邦国統一の遅かったドイツにはいわゆる「旧植民地国からの移民の統合政策」という実績はない。
100万人OKと言ったときには、サウジアラビアが、ではドイツにモスクを200作る金を出しましょう、などと申し出ていた。フランスには絶対に言わないようなことだ。

ドイツは今年6度目のテロだけれど、そしてCDUも今まだ犯人が捕まっていない時点で移民政策を一から見直せ、とメルケルに迫っているそうだけれど、それでも、なんとなく、フランスほどにはショックを受けていない気もする。ショックの受け方が違うと言った方がいいかもしれない。

それはオランド大統領が「戦争だ」と言ったけれどメルケル首相は一度も「戦争」という言葉を口にしていないことの差だ、と誰かが言っていた。
テレビで、1980年7月のミュンヘンのビール祭りでの爆破テロのことまで持ち出して、テロの後も彼らは祭りを中止せずに続けていた、と言うのだ。

今年のシャンゼリゼのクリスマス・マーケットは夏のニースの事件があったから、トラックが突っ込まないことをように様々なブロックがなされている。ベルリンにはなかった。

結局、いつも思うけれど、災害対策と通じるところがある。

いつどのように起こるか予測できないこと、
だからと言っていつも戦々兢々として生活するわけにはいかないこと、
でも過去の被害に学んで対策を立てたり予防したりするべきであること、などだ。

災害対策と違うのは、ヨーロッパの国が、一方で、中東内戦の種をまき、武器を提供し、難民を作り出し、人道支援をし、難民救助をしながら、復讐されるリスクも高め、自国の中からもテロリストやテロリスト予備軍が生まれるのを放置するなど、力と金と石油と覇権主義のせいでその場しのぎの失敗を重ね、ことをさらに複雑にしているところだ。

ベルリンのテロが起こったらアレッポの難民などテレビの画面から消えてしまった。
フランスの大統領選も、セキュリティや難民対策に論点がシフトしていくのだろうか。
要観察。
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by mariastella | 2016-12-21 09:00 | 雑感
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