L'art de croire             竹下節子ブログ

大統領選に変化。マクロンとバイル―が組む。

寄り道、第三弾。

フランス大統領選がおもしろくなってきた。

中道モデムのフランソワ・バイルーが、なかなか出馬を発表しないと思ったら、マクロンを支援することを決めたのだ。これで、マクロンは中道左派というより中道認定。

しかも、最近のマクロンは何かあやしかった。
アルジェリアの植民地政策が人道に反する罪だと言ってアルジェリアからの引揚者たちからのヒステリックな抗議を受けたり、彼のミーティングの演出の内幕(盛り上げ要員を募集してスマホで「ここで拍手、ここでこう叫ぶ」などと実況指示してそこだけにスポットライトを当てていた)を暴露するyoutubeが出回ったり、前に声を嗄らして叫ぶのがどこの生き神さまですか、という感じで揶揄されていた。

今まで議員になったこともなければ「政党」にも属さずに拡大するファンを連れてあちこちでミーティングする様子が「キリスト的」だとも言われた。最新の『シャルリー・エブド』の表紙には十字架に架けられたマクロンが「私はあなた方を愛している!」と叫んでいるカリカチュアだった。

こんなことをいうと悪いが最近のマクロンはキリストというよりサイコパスみたいでどこか気味悪かった。

ところが、昔はどもりがちなことを揶揄されていたけれど今やすっかり安心できるおじさん風になったバイル―がマクロンと並ぶと、なんだか、中和されていい感じだ。酸いも甘いも嚙分けたベテランの苦労人のおとうさんが血気にはやる息子を頼もしそうに支えるイメージ。
これとか、これとか。

南西部ポーの市長として人気のバイル―だから、アミアン出身のマクロンを支えるにあたって、「セーヌより北ってことはちょっと、なんだけど、彼のおかあさんは南の出身(ポート同じくピレネーあたり)だから」などと付け加えていたのもおもしろい。この人が言うと何かほっこりする。昔はもっと悲愴な印象もあったのだが。

マクロンがフランス的だと思うのは、「集団の知性に訴える」と連呼しているところだ。
この辺が反知性主義のポピュリズムと違うし、フランス人というのは、一般に、「知性的(に見える)な者」に弱い。今日はフランス映画のセザール賞のセレモニーの日だが、アカデミー賞やなんかの作りとは決定的に違うスノッブさがいつもある。

だからこそ、トランプ大統領を評価する極右のル・ペンですら、言い方にも物腰にも、細心の注意をはらっている。

このフランス人の「エリート・コンプレックス」みたいな上昇志向が完全に崩れたのは10年前のサルコジの登場だった。「コンプレックスを吹っ飛ばす」サルコジは、これまでのフランス大統領なら絶対に口にしないような言葉を使った。

これでよく通用するなと思っていたが、さすがに再選されなかったし、今回も予備選で落ちた。

さて、バイル―に続いて、緑の党のヤニック・ジャドも、出馬をやめて社会党のアモンの支援に回ると言った。緑の党はこれまでずっと独自候補を立ててきたから、この方が実は、今の時代の危機をよく反映していて重要なことかもしれない。

ジャドとアモンは今年50歳の同い年だが、この2人も、アモンがなんとなく人相が悪いのに比べて、ジャドは信頼できそうな感じのいい兄貴分のように見える
緑の党への投票予想はもともと2 %くらいなので大きな追い風にはならないだろうが、こちらも中和していい感じになった。

極左に位置するメランションが彼らに合流する可能性は少ないが、メランションは癖があって濃すぎるので、ジャドやアモンと並んだら、絵的にはかなり微妙だ。

共和党のフィヨンは合法だとしても結果的に妻子に利益供与をしていたので、EUの金を党の資金に回していたル・ペンよりも苦しい立場に立ったままだ。彼の、篤実で信頼できるというイメージを自分で裏切った形だから、なんだかだんだん見苦しくなってきた。

でもある社会党の政治家(ヴァルスを支持していた)が、自分はアモンの政策に賛同できないところはあるがもちろん応援する、投票は心でなくて理性でするものだ、感情によらないで信念によらなくてはならない、と強調していた。

トランプ効果、というのを感じる。
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by mariastella | 2017-02-25 03:43 | フランス
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