L'art de croire             竹下節子ブログ

仏大統領選の候補者が日本語を話すこと

フランスの大統領選に出馬するには市町村の長による認可署名が500以上必要だ。

「面白半分」の候補や奇矯な人を取り除くためで、これをクリアできた人が今のところ7人。

フィヨン、マクロン、ル・ペン、アモン、メランションらのメジャーの他に、「へえっ」と注意を引かれたのが、UPRのフランソワ・アスリノーという今年60歳の人。

UPRという政党はこの人が立ち上げ、メンバーが600人しかいなかった5年前には500の署名が集まらずに立候補を断念したが、今は1万8000人のメンバーがいて、署名も集まり、晴れて正式に立候補という。

ユーロ、EU、NATO からの離脱を公約していて、「アメリカ嫌いの陰謀論者」というのが彼を形容する言葉だ。彼と彼の党の「躍進」もポピュリズムの高まりの表れであることは間違いない。

でも決して「政治かぶれの変なおじさん」などではなくて、フランスの政治家として超エリートのHEC、ENAを出て、財務省でキャリアを築いてきた。

それはいいのだけれど、驚いたのは「日本ファン」で「日本語ぺらぺら」で知られていることだ。このビデオで日本語をしゃべっている。


1981年に日本のフランス大使館の経済部で働いていたそうだ。

日本は欧米の植民地にならなかった数少ない国、それなのにアメリカの占領軍に憲法を押し付けられて天皇が人間宣言をしてしまった、と、なんだか「美しい国、日本」のファンのようだ。

先日の記事のウィルダースもそうなのだけれど、極右のグループで、「人種差別」だと批判されるを否定する根拠に、「自分もインドネシアとのハーフで差別された」ことで正当化する人や、

「私は差別主義者ではない、マンガのファンだから」

などという人がいる。

アスリノーも似たようなもので

「日本ファン」

であることを自分が「差別主義者ではない」ことの担保にしているわけだ。

まさに、日本は過去に「植民地」ではなかったから使い勝手がいいのだろう。

「名誉白人」、「クール・ジャパン」。

シラク大統領も日本好きで知られていたが、彼はアフリカや他のアジアの国や文化も好きだった。

ああ、そういえばアスリノーも、「オセアニアも好き」らしい。
中東やアフリカのような都合の悪い国々とちがって、日本とかオセアニアなら突っ込まれどころが少ないのかも。

ル・ペンの国民戦線にも、ある意味で広告塔のような黒人やアラブ人が加わっている。No2のフロリアン・フィリポが同性愛者というのもイメージアップに役立っている。

アメリカ嫌いのアスリノーは、

「美しい国、日本」を取り戻そうとしている首相がトランプ大統領とお友達

ってことは、スルーできるわけだ。

政治家の言説ってそんなもんだと思っても、それに簡単に取り込まれていく人々がいるのだから、「泡沫候補」だとしてもこちらはスルーしてはいけない。
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by mariastella | 2017-03-15 00:17 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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