人気ブログランキング | 話題のタグを見る

L'art de croire             竹下節子ブログ

機内で観た映画 その3『海賊とよばれた男』と『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』

今回も帰りは昼間の便なので、日本映画も2本観ることができた。

『海賊とよばれた男』は、百田尚樹の原作で「永遠の0」と同じチーム、主演だというのでひるんだのだけれど、モデルになっている人の関係者を個人的に知っている事情もあって好奇心があった。

知らなかったことをいろいろ知ることができたという点ではおもしろかったけれど、ここまで「男」の論理、力と突撃の賞賛というのは私のポリシーと逆なので、評価のしようがない。

モデルになった人物がかなり大柄だったようなのに比べて主演の俳優が小柄だけれどカリスマ性があって大きく見える、というのは興味深い。大作であるのは確かだ。

それでもやはり、戦争の「男らしさ」をこれでもかこれでもかと見せつけられるのには少し食傷して、それとは別世界の小品ファンタジーを口直しに観ることにした。詰まらなかったら途中でやめようと思ったのに最後まで観てしまった。

『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』というかわいい作品だ。

ライト文芸の名作と言われているものが原作だそうで、20歳の学生同士という主人公の男女がさわやかで初々しくて楽しい。アニメを見ているみたいだ。

普通のラブストーリーかと思っていたらSF化していき、なるほどこうなのかと驚かされるところも、なんとなく「君の名は」を思わせた。

ついこの前、出町柳の駅を通ったので京都が舞台だということに親近感があったけれど、登場人物の誰一人として京都風や関西風の言葉を話さないのは、原作がそうだとしても違和感がある。

というより、このストーリーには、地方色のないフラットな感じの方が似合っているので、「京都」という背景の方が違和感があるくらいだ。

もちろんあり得ない設定なのだけれど、無理をして受け入れると、すべてのシーンが二重の意味を帯びてくるというのがよくできているし、なんだかループ状になったビルドゥングス・ロマンみたいだ。

それにしても、『海賊とよばれた男』の世界と『ぼくは明日…』の世界の若者の心性は違いすぎる。平和で戦わない、という感じの後者が今の若者のスタンダードなのだとしたら、ほっとする部分と、そんなに内向きで大丈夫か、と心配になる部分とがせめぎあう。
by mariastella | 2017-04-20 05:29 | 映画
<< こんの げん さんの作品を見て... テレマンの『ブロッケス受難曲』 >>



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/

by mariastella
以前の記事
2024年 03月
2024年 02月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 11月
2023年 10月
2023年 09月
2023年 08月
2023年 07月
2023年 06月
2023年 05月
2023年 04月
2023年 03月
2023年 02月
2023年 01月
2022年 12月
2022年 11月
2022年 10月
2022年 09月
2022年 08月
2022年 07月
2022年 06月
2022年 05月
2022年 04月
2022年 03月
2022年 02月
2022年 01月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 10月
2021年 09月
2021年 08月
2021年 07月
2021年 06月
2021年 05月
2021年 04月
2021年 03月
2021年 02月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 10月
2020年 09月
2020年 08月
2020年 07月
2020年 06月
2020年 05月
2020年 04月
2020年 03月
2020年 02月
2020年 01月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 10月
2019年 09月
2019年 08月
2019年 07月
2019年 06月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2019年 02月
2019年 01月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 10月
2018年 09月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2018年 05月
2018年 04月
2018年 03月
2018年 02月
2018年 01月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
カテゴリ
検索
タグ
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧