L'art de croire             竹下節子ブログ

マクロンこぼれ話

マクロンが仏大統領選のトップに立ったということで、日本でも彼について関心が出てきたようだ。

24歳年上の日本ではいわゆる「年の差婚」の夫人ブリジットについて、前夫は何者かとある人に聞かれた。

だから少しマクロンをめぐるゴシップを紹介しよう。

ブリジッドさんの前夫は、アミアンの銀行家で、名前も分かっているけれどすでにリタイアしているだろう。彼女が20歳の時に結婚しているからもう60代後半だと思う。
前夫との間の子供3人は長男がエンジニア、長女が循環器医、次女が弁護士でこの次女はマクロンの選挙運動に公式に関わった。

注)フランス語のエンジニアというのは前にも書いたが、フランスの最大のエリートコースであるエンジニアのグランゼコール(今は学部からも可能だし、中途入学も可能だが、内部では差別されているくらい、グランゼコール予備クラスからの入学生がエリート)の卒業でエンジニアというタイトルを持っている人ということで、日本語や英語のエンジニアとは全く違う。日本語や英語のエンジニアはフランス語ではテクニシャン(技術師)というタイトルで格下となる。エンジニアの学校は要するにあらゆる分野の管理職養成の場所だ。それに比べれば医学部はやや格下、弁護士はもっと格下と見なされてしまうのが一般的だ。つまり、長男はエリートコースの王道である数学強者だということだ。まあそのような「格付」も「エリート内部」の話だけだけれど。

話を戻すと、前にも書いたけれど、このところ、クラシックな「夫妻」として機能する大統領がいなかった。今回の大統領候補たちも予備選も含んで、みな事実婚や再婚などを繰り返している人ばかりで、だからこそ、同じ妻と5人の子をもうけたフィヨンのクラシックな安定感(と言っても、日本の感覚なら奥さんがウェールズ人だということがすでにクラシックとは言えないが)が保守の信頼感をそそったのだ。しかしそれが裏目に出て、専業主婦と称していた奥さんや子供たちの架空雇用や不正雇用のスキャンダルが命取りになってしまった。

で、マクロンは、16歳で恋に落ちた(マクロンの母親は、息子はたとえレチシア・カスタが目の前で服を脱いでもなんの関心も持たないだろう、妻とは完全に一体化している関係だ、と言っているそうだ)リセの教師と29歳で結婚して、妻の孫の世話(孫は7人いて、去年の夏には末の孫息子の洗礼式に出ている。)もしているのだから、これも、ある意味の安定感がある?
(ロックスという名の柴犬も飼っている)

まあ、まだ39歳だから、他の老練な政治家たちの女性遍歴(あるいはル・ペン女史の男性遍歴)を見る限り、これからだって破局があるかもしれない、などという下世話な考えもあるが。

フランスでは1980/12月に、18歳未満の生徒と関係をもった教師に3年までの懲役となり得る法律が成立している。教育社会主義的なフランスでは学校は共和国の聖域だからだろう。1969年に、16歳の生徒と関係した32歳の女性教師が刑務所に入れられた後自殺するという事件もあった。

マクロンは高3でパリに出て、ブリジットは離婚してやはりパリの、今度は16区の私立高校の教師になる。

それから十年以上経って、ENAを卒業し、将来のキャリアが約束されてから晴れて結婚したというわけだ。50代に入っていたブリジットは彼のキャリアを支える役にまわる。

うーん。
ブリジットさんと同世代の私としては、いろいろ考えさせられてしまうのは確かだ。

2人の結婚式のビデオがテレビで放映されてネットにも出回っているが、この時のマクロン(29 歳)のスピーチは、なかなか感動的で、ブリジットの子供たちに感謝しているのが印象的だ。(ここで見られます。CMの後です)

この時のスピーチは、ある意味、今のマクロンのスピーチと姿勢が変わっていない。
この人には人の共感を呼び支援者を作る才能があるのだろう。

16歳の彼の書いた詩があまりにも素晴らしいので毎回のフランス語の授業でブリジットが読み上げたというのだから、昔から文才もあったのだろう。
才能と野心に加えて、困難はあったとはいえ、16歳から一人の女性と相思相愛で来たということは、多くの若者のように晴れた惚れたで時間を奪われることがなく、無駄なく突っ走れたともいえる。「自分の子供を赤ん坊から育てる」という必要もなく来れたし、自分の選択を周囲に正当化するために若くして、社会的、金銭的な成功を得るモチヴェーションになったのかもしれない。

彼に比べると、サルコジなんて、女性や子供のことで多くのエネルギーを浪費してきたともいえる。

サルコジと言えば、彼の鼻とマクロンの鼻はなんとなく似ている。
ル・ペン(父)などは、大統領時代のサルコジの鼻がますます突出してきた、出自(母方がユダヤ系)を彷彿とさせるなどと、差別発言をしていたし、サルコジは横顔の撮影を嫌がっていたという話もある。マクロンも、ロスチャイルドの銀行家だったことから、共和党系のカリカチュアで、鉤鼻に帽子に葉巻という姿で描かれ(後に削除された)た。
けれども、いや、よく見ろ、マクロンの鼻は完全にブルボンの鼻だ、という言説もあったし、左派系のカリカチュアでは鼻に特徴がない。
一番印象的なのは真っ青な目だろう。これでアーリア人認定する人もいる。

北フランス系だから、コルシカ出身のナポレオンとは全く違うはずだけれど、そして時代はもちろんキャリアもまったく違うけれど、その人心掌握の仕方がナポレオンと似ているという印象は変わらない。

全体として、もしマクロンがこのまま予測通り大統領になったら、フランスっておもしろい国だなあとあらめて思う。

こういうタイプの若いヒーローはギリシャのツィプラスとかスペインのポデモスなどに見られる急進左派のポピュリズムに見られる。つまり今のフランスのメランションのような極左のトップにマクロンのような若者が躍り出るという構図だ。

フランスではそれが、中道左派のリベラルというところがおもしろい。
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by mariastella | 2017-04-24 21:49 | フランス
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