仏大統領選の第一回投票が終わって、翌朝、地方別、県別、パリ郊外のイール・ド・フランス県の市やパリの区別の結果をじっくり見た。
予想を大きく覆すものはない。
地方選挙の結果と同じで、地方における国民戦線支持は確実に広がっている。
一年前まではジュッペが大統領になると言われ、半年前にはフィヨンが大統領と言われたのに、初回で消えてしまった共和党だが、ブルジョワや年金生活者に強固な支持層があるので「消滅」はしないだろう。総選挙で回復するしかない。
今回のもう一方の敗者である社会党は、内部を両側からマクロンとメランションに引き裂かれたわけだから、再建は著しく困難だろう。
2002年のルペン(父)とシラクの対決の時は、左派が一致してルペンを阻止する動きを見せたが、今回は保守が一致してルペンを阻止するかどうかは分からない。棄権すると公言する人も多い。
マクロンとルペンではペストとコレラのどちらかを選べと言われているようなものだ、と形容する人もいる。
今回、敗退してすぐにマクロンの支持を表明したアモンは潔いというか好感が持てたけれど、ルペンと同じくEU離脱を唱えるメランションはとても歯切れが悪かった。
ここにきて、EU離脱を決めたイギリスの景気がむしろ順調であることも判明して、もし今もう一度国民投票したら前よりいいスコアで離脱賛成になると言われている。
でも、前にも書いたが、イギリスはもともとEUの「特別枠」みたいな存在だった。そして反EU派からはEUがまるでドイツの傀儡のように言われているけれど、それは間違っている。
本当は、EUを一番有効利用してきたのはフランスだった。
しかし、どんな高邁な理念を掲げても、結局あらゆる国際組織が、いつしか金と軍事の論理に牛耳られてしまう。
ヨーロッパの始まりは普遍主義的理想だったが、実際に結束させたのは冷戦の危機であって、トルーマンとスターリンがEUの生みの親だという皮肉な言い方もあるくらいだ。
マクロンのヨーロッパも、市場経済と金融のヨーロッパだ。
金と力と、その複合体(武器産業と戦後復興産業)が支配する経済のベースに、普遍的な人権主義とエコロジーをどこまで組み入れてシステムを再構築できるのか、が問われていることはマクロンも分かっている。
彼の明晰さに期待できるだろうか。