L'art de croire             竹下節子ブログ

ル・ペンとメランションの違い

4/26に、ポーランドへの移転で工場閉鎖が決まっている洗濯脱水機の製造工場にマリーヌ・ル・ペンとマクロンが出向き、組合員などと接触した。ル・ペン女史の方は、トランプと同じく、「私が大統領になったら工場は閉鎖されない、国有化して救う」などと勇ましいことを言っている。歓呼に応え、満面の笑みでスマホのツーショットに応じている。
マクロンは当然、こうなったグローバリズムの責任者として糾弾されてかなり苦しかったが、まあ、だからこそ、これからはすべての人と連帯して、という主張を一応は誠実に繰り返していた。

「国有化して救う」など、なんの保証もない。
同じ「救い方」でも、メランションの唱えていたやり方はもっと現実味があり周到に考えられたものだった。

ル・ペンとメランションが極左と極右同士で同じようなことを言っていると揶揄されがちだけれど、まともに聞けば、メランションの方が説得力があり、展望がある。

反対派からわざと混同されるのは、弱者、負け組、マイノリティを優先するという言い方、新自由主義経済への批判など、「問題の立て方」が共通しているからだ。
ただし、その問いに対する答え方はまさに極右と極左の差がある。メランションの回答はコミュニズムのベースに立っている。ユニヴァーサリズムとしてのコミュニズムだ。ではなぜ、「共産党」ともっと提携しないのかというと、共産党のコミュニズムは一党支配の党派的なもので全体主義につながってきた歴史があるからだ。

といっても、ベネズエラのチャベスとキューバのカストロが2004年に設立した貿易・社会開発協力機構「米州ボリバル同盟ALBA」に加盟すると言って物議をかもしたようにメランションは十分挑発的ではある。

しかし、チャベスの亡き後、今のベネズエラのコミュニズムはもう民衆を救えていない。あれほど自然資源の豊かな国なのに、原油の価格低下もあり、ポスト・チャベスは風前の灯火で暴力の連鎖が続き、死者も増えている。

ル・ペン型のナショナリズムは論外だけれど、コミュニズムが真の「救済」に結びつくのも、経済の後ろ盾がないと困難なのだ。

それでも、もはや、国際金融機関と癒着しているエリート社会党が崩壊した今は、真の左派はアンチ・リベラルのメランションでしかない。

建前の消えたポスト社会党からは、本音に近いマクロンに流れていく者が少なくなく、彼らはもう早々とマクロン支持を表明している。
けれども社会党「左派」はメランションに合流することを躊躇する。
メランションの「不屈のフランス」党が、社会党や共産党との共闘を拒否しているからだ。
6月の国民議会選挙後に「不屈のフランス」党が生き残っているかどうかは分からない。

2002年にシラクとジャン=マリー・ル・ペンの決選投票になった時、シラクはル・ペンとの公開討論も拒否し、全国民に、「FNを阻止するために私に投票してくれ」と呼びかけた。その時はメランションも、シラクに投票するようよびかけて、シラクは歴史的な高得票を得て勝利した。

今回は、すでにFN二代目の娘のマリーヌが、さすがに父親のように「死刑制度復活」などは公約に入れていないが、出生地国籍主義を捨てることや、不法滞在外国人の排除や、移民の家族呼び寄せ制度の廃止、自国民優先を憲法に書き加えることなど、基本的に同じことを言っている。

けれども、今は時代背景や状況が変わった。

貧富格差の拡大や生産地移転による失業者増加、治安の悪化などによって、トランプと同じように、とにかく既成のシステムを悪者にして、今までの政治に参加していない自分こそ救世主というタイプのポピュリストが人心を把握する時代であること、

すでに15年前にはあり得なかったような躍進を地方選挙で実現していること、

マリーヌが創設者の父親を除名してまでも、極右ではない立派な正統的な共和国主義者であると演出していること、

それに加えて、マクロンは、シラクのように「FNを阻止するために私に投票してくれ」と呼びかけるのではなく、「私のもとに集まってくれ、分裂したフランスをまたひとつに!」と言って自分の考えに「帰依」することを求めている事実がある。

だから、メランションやコアなメランション支持者たちは、「FNには投票しないが、マクロンに与するのは拒否」として棄権または白紙投票を表明しているわけである。

保守共和党の方は、リベラルで既得権益のある派はマクロンに合流するし、
右寄りの一部はル・ペンに近づく。
彼らにとっては、やがてFNからフロリアン・フィリポもマリーヌも追い出してマリオン・マレシャル=ル・ペンの体制にするのが理想だ。

では、次に、カトリックの立場から候補者たちを見てみよう。(続く)
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by mariastella | 2017-04-29 02:19 | フランス
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