L'art de croire             竹下節子ブログ

大統領戦とカトリック

(これはこの前の記事の続きです。)

第一回投票の一週間前に当たった今年の復活祭には、カトリック票をねらうフィヨンやマクロンのパフォーマンスがあった。

フィヨンは保守の中で最もカトリック寄りで、
マクロンは左派の中で最もカトリック寄り、

というのが一般的な見方だった。
 
フィヨンは、妊娠中絶その他について、カトリック保守派を支持している。ミサにもちゃんと行く。

しかし、経済政策は別で、マクロンと同じくリベラルでブルジョワの味方であることは明らかだ。

マクロンは復活祭のミサの写真は撮らせなかったが、カトリックのカリタスが運営する宿泊センターで2時間半も過ごして、

「カリタスの価値観は自分と同じで、みんなの利益と寛大さだ」

と言い、

「カトリックであることは最も貧しい人の権利を守ることであって、人々から権利を奪うために戦うことでない」

と言ってフィヨン風の保守反動カトリックを批判した。

難民、移民に関しては、マクロンは、メルケル首相を称賛し、クォータ制なしの受け入れを提唱している。この辺はローマ法王に気に入ってもらえるだろう。

カトリックのリベラル派(ここでいうリベラルとは左派というわけでなく、新自由主義、金融資本主義の恩恵を受けている有産階級、起業家たちのことだ)には、各候補者の姿勢を「分析」して、フィヨンこそ真のクリスチャンで、カトリックはフィヨンに投票しなければならない、という呼びかけをネット上でしたものがある。

これに対して、カトリック左派(つまりキリスト教社会主義寄り)は、「フィヨンの経済政策はローマ法王の糾弾するものである」、といって反駁した。

アメリカのエスタブリッシュメント(ブッシュの弟など)のカトリックなどはフランシスコ教皇そのものを受け入れない姿勢さえ示しているから、今のローマ法王は、新自由主義経済の勝ち組にとってはまさに不都合な「左派」である。エコロジーにも妥協がないから極左と言ってもいいかもしれない。

前の記事でも書いたように、新自由主義経済のもたらした弱肉強食のグローバリゼーションを真っ向から叩く、という点では、メランションとル・ペンの口調は一致する。

マリーヌ・ル・ペンは、従来のFNの排外主義、国粋主義、歴史修正主義などの主張を「封印」して、グローバリゼーション、功利的な富裕層による労働者の切り捨て、について大声で弾劾している。その部分だけを切り取れば、ローマ法王にだって気に入ってもらえるだろう。

けれども、その、「金融経済システムと戦う」手段、解決法が、移民の排斥や国境の閉鎖、外国製品の関税強化、などでは、ローマ法王の逆方向だ。(移民排斥やナショナリズムももちろん論外だけれど)

でも、彼女が、失業の危機にさらされた人々の前で

「弱肉強食のシステムを変革するぞ、戦うぞ」

という意気を上げている部分だけを聞くと、その挑戦については同じことを言っていたメランションの抜けた今、人々が
「救世主はこの人、一度はやらせてみる価値があるのではないか」
と希望を託すのも無理はない。

オランド政権の経済相だったマクロンは「敵の側にいるやつだ」と叫べばいいのだから。

でも「やりすぎ」で逆効果かなと思ったのは、ルペン女史が、グローバル金融経済という巨人に対してたった一人で立ち向かう自分のことを旧約聖書(サムエル記)のダビデとゴリアテに例えたことだ。武装した巨人のゴリアテは、投石器しか持たない若いダビデに石つぶてを眉間を打たれて倒された。

うーん、意味は分かる。

でも…ル・ペン女史のキャラはダビデというより、ゴリアテっぽい。

しかも、今、マクロン対ル・ペンという構図である状況で、キャラとしては若いマクロンの方がどう見てもダビデっぽい。

新自由主義経済、グローバリゼーションという「巨人」を体現するのがマクロンだ、ということになるが、今のビジュアル先行の世の中においてはなんだか無理がありすぎる。ミスマッチで笑えてきた。

では、ル・ペンと同じ糾弾をして、実現不可能な極右政策とは逆の解決策を提示するメランションが、実は一番カトリック的なのだろうか?
(フランスは伝統的にカトリック文化圏で、自由主義経済のルーツにあると見なされるプロテスタントの票田は小さいので、カトリックやローマ法王のスピーチや動向が注目されやすい)(続く)
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by mariastella | 2017-04-30 07:08 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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