L'art de croire             竹下節子ブログ

大統領選をめぐるフランスのカトリック

これは前の記事の続きです。

で、「ローマ法王にフランスの選挙権があったなら?」というお題に戻るが、結局リアルの教皇は、意見を求められると「自分には意見をいうほどフランスの政治状況を理解していない」ということに落ち着いているようだ。

マリーヌ・ル・ペンは自分のカトリック・ルーツを強調するが、彼女の「政策」のメインとなる移民・難民の制限や差別についてははっきりと現教皇に敵対している。この辺は、「アメリカのエスタブリッシュメントのカトリック」陣営と変わらない。

マクロンは、いわゆる「幼児洗礼」を受けていない。彼は両親がいわゆる「68年世代」だからだろう。親が生まれた頃は、第二ヴァティカン公会議前だし、「洗礼」も宗教というよりたんにファミリーの行事に近かった。68年世代は規制のシステムにノーを突き付けた世代だから、マクロンの両親もいわゆる「インテリ左翼無神論」のグループに近かったのだろう。でも、よくあることだが、そういう旗印とは別に子供はイエズス会系のカトリック私立校に入れたわけだ。フランスという国で「カトリック」や「キリスト教」の基本教養がないことは知識人としては歴史的にも文化的にもハンディキャップだから、その意味では両親の選択は理解できる。
結果、マクロンは12歳で自分の意志で洗礼を受けたという。
これも分かる。フランスのカトリックの中学(マクロンの場合10歳で入学したと思われる)では、キリスト教の時間があって、幼児洗礼を受けている子供に堅信礼や信仰告白のセレモニーを学校で主催するのが普通だからだ。もちろんフランスのカトリック校で共和国の認可を受けているところは、入学基準に信教の基準はないから、仏教家庭やムスリム家庭の子供でも入ることができるし、カトリック内のさまざまな準備クラスに出ない生徒には教養としてのキリスト教や宗教史などの別のクラスが用意されている。
でもまあ、親が単に「インテリ左翼無神論」でも実はカトリック文化のアイデンティティを持っているような家庭の子供なら、10代の初めに、カトリック校に通っていたら、「洗礼」を望むという方向に行くのは自然だろう。「みんなといっしょ」という同調圧力というよりは、フランスの場合、そしてマクロンの場合、やはり文学作品との出会いなどが大きかったのだろうと思う。

でも、その後に既婚の教師との恋や、離婚した相手との結婚があり、
それをいうならル・ペン女史も2度の離婚と今の事実婚があるわけで、

大統領のポストを目指すほどの人たちなら、カトリックであっても「なんちゃってカトリック」というのがフランスのデフォルトらしい。

フランスのカトリック司教評議会は、大統領選の投票について口を出さないことに決めた。
個々の司教や、カトリック・メディアはかなり自由に発言している。

アメリカ、ハンガリー、トルコなど、「民主主義」を掲げている国のリーダーがメディアを攻撃したり統制しようとしたりする時代だから、メディアはポピュリストの動きに警戒心を抱いている。

カトリック・メディアの大手は、FNの「自国ファースト」や移民難民の排斥が分かりやすい「反キリスト教精神」ということで、アンチ・ル・ペンだけれど、マクロンの「新自由主義」路線も、ヨハネ=パウロ二世の頃から批判されてきたものだから、「マクロンに投票する」ことの意味について自問している。その一部を紹介しよう。(続く)
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by mariastella | 2017-05-05 04:56 | フランス
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