L'art de croire             竹下節子ブログ

エマニュエル・マクロンはフランスを救う?

これを書いているのはフランス時間の5/6の夜。
24時間後には新大統領が選出されている。

明日の午後はオペラ・コミックにマラン・マレのオペラ『アルシーヌ』を観に行くので、帰ってきたころには速報が出ているかもしれない。

このブログでは大統領選とカトリックの関係について少しずつ書いてきた。
まとめてみよう。

フランス司教評議会は、いくつかの重要点をに触れたが候補者の名を特定しなかった。
そのせいで、個々の司教たちがメディアから意見を聞かれることになった。

まあ、一般的なのは、「良心に従って選びなさい(トゥーロン司教)」というものだ。
ルーアンの大司教ルブランは「福音書を手にもって投票しなさい」と呼びかけたが、どのページを開けとは指示しない。

ただし、一次投票で三割以上の票がル・ペンに投じられたような司教区では、ポワティエ司教やサンブリィュー司教やポントワーズ、トロワなどの司教たちは、アンチ・ル・ペンを表明した。

マクロンに投票しろと言明した司教はいないようだ。

カトリック知識人たちにも、FNの外国人排斥が福音書に反していると明言する人がどんどん出てきた。ジャン・オルメッソンのような人気作家もそうだし、カトリック系の38団体、カリタスやマルト会や各種の人道支援のNPOもアンチFNを唱える。主要雑誌はマクロンへの投票を呼びかける。

一方で、同性婚法に反対したカトリックのグループはマクロンにも反対し、キリスト教政党の政治家クリスティーヌ・ブタンなどははっきりとル・ペンに投票すると言っている。政治人類学やキリスト教共同体主義の著書がある哲学者チボー・コランもル・ペンへの投票を呼びかけている。彼らの信念は「社会には守り続けるべきものがある」ということのようだ。

異種の排斥はキリスト教的ではない、というのとは別に、規制撤廃の自由化によって善き文化を破壊するのはよくないというキリスト教保守がいる。
フランスのカトリックは少なくとも「一枚岩」ではないのが分かる。

宗教や宗派以前のイエス・キリストのメッセージ(よそ者に宿を貸すというのも含む)に最も忠実な人たちには、「自分ちファースト」のナショナリズムは受け入れられない。
けれどもそれとは別に、文化的、階級的アイデンティティとしてのキリスト教徒がある。彼らは教義や典礼を共有することで連帯しているのだ。

今のフランスで、テクノクラートと化したEUや、経済成長などの数字のみによって存在が認められるグローバリゼーションのせいで、見捨てられ切り捨てられる人が増えているというのは誰も否定できない。

国が人々をその難儀から救おうという時に、

内向きになって国境閉鎖や外国人外国製品を排斥することで「フランス人を敵から守る」と言うのか、

外向きになってグローバルなレベルで戦う人の成功を助けて豊かさを生むことで「敵から守る」と言うのか、

その違いがル・ペンとマクロンの違いだ。

ル・ペンのやり方は実際問題として不可能である。

けれどもマクロンのように、

拝金主義が蔓延した結果拡大した経済格差の深刻さを解消するために、
貧しい人にもチャンスを与え、才能ややる気のある人に自由に能力を発揮させて稼がせる、

というのは、

何だか、軍拡競争、抑止力増大にも似ている。毒をもって毒を制す、というやつだ。

そんなことに「国家」が梃入れして煽るよりは、その競争に与しない人、はじかれた人を守って、犠牲となった人を手当てする方に回るべきではないか、ということを感じている人が少なくない。

けれども、そんな慈父型の「国家」はもう存続が難しい。

今回の大統領選でマクロン大統領が誕生するとしたら、それは、

ある目的やイデオロギーを持った党派

の時代から、

現状を見据えて進み方の「方法と方向」について合意を図るグループ

の時代に移るということなのだろう。

それはデジタル時代と、とても相性がよさそうだ。
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by mariastella | 2017-05-07 07:05 | フランス
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