L'art de croire             竹下節子ブログ

大統領選から一夜明けての感想

決選投票から一夜明けて、ラジオと新聞でいろいろなコメントをチェックし、地方別、都市別、そして私や友人知人の住んでいる場所別にマクロンとル・ペンの支持率の割合を眺めて何か見えてくるものがないか考えた。

なかなか難しい。

移民やムスリムや外国人の多いところでル・ペンの支持が多いのかというとそうでもない。移民や移民の二世、三世、ムスリムなど二重国籍を持っている人も多いし、選挙権があるから、そういう人たちはみなル・ペンを嫌ってマクロンに投票する。
ル・ペンに投票する人は、イスラム過激派が怖いとかゲットーが怖い、不法滞在の外国人を追い出して過激なモスクも閉鎖して、という「分かりやすい」政策に期待するというセキュリティの動機よりもやはり経済的な動機だ。

貧困は金融経済と癒着したエリート政治家のせいで、ル・ペンならそれを一掃してくれると本気で信じているかどうかは分からないけれど、既成のシステムへの抗議の表れなのだろう。

同じようにマクロン支持も、マクロンを信じ期待しているというよりも、やはりル・ペンのやり方では実際問題として経済がもっと悲惨なことになる、という認識だろう。

総選挙の後でほんとうにル・ペンが最大野党になってしまうのか、二大政党が復活するのか、マクロン支持が絶対与党になれるのか、今回はまだまだ目が離せない。

右でも左でもない、フランスを統合するというマクロンのスローガンは、言うのはたやすいけれど、中身がない、あいまいだ、などと批判されているけれど、「統合」というものは本質的にそういうものだ。
「あいまいさ」や矛盾、葛藤のない「統合」は全体主義、ファシズム、独裁主義につながる。

イデオロギーや教義が個人の自由を奪うことに反対し続けた哲学者のジャンヌ・エルシユが
「あなたが人間の(存在)条件の問題に関わっていて、パラドクスに突き当たったなら、それはあなたが正しい道にいるということです」
というのは真実だと思う。

すごく個人的なレベルで考えてみよう。

マクロンの政策が施行されたら、可処分所得は減る。
80%の人の住居税を免除すると言うが、こういう時には絶対その恩恵にあずからないのに、株が上がっても富裕層が有利になっても、その恩恵にもあずからない、
いつも微妙に損をしている中途半端なレベルにいるからだ。
テロは怖いし嫌だけれど、分かりやすい対症療法をしても解決しないことは分かっている。根本的な、地政学的な判断と危機管理が必要で、国境を閉鎖などという無意味なことを、地続きで多数の国がひしめいてアフリカや中東とも接しているヨーロッパでやるのはなんの解決にもならない(その点は日本のような「島国」は多少の地の利があるけれど)。
グローバリゼーションの拝金主義や環境破壊や弱者の搾取は大問題だけれど、その問題を提起し、気づき、解決に努力し、行動を起こしているエリートたちも実際にいる。その声が聞こえ姿が見えるからこそ、私のような中途半端な者でも問題意識を持ち続けることができるのだ。

自分の所得や自分の安全のこまごました損得やリスクや恐れを考えるよりも、地球レベルでものを考える方が優先だと納得している。

「知性に訴える」というのを信じているといってもいい。
それがなければ人類はもう、とうに滅びていたかもしれない。

もう一つ個人的な確信は、アートには人を救う力があるということで、アートの成立には「自由」が必要だということだ。

私のすべきこととできることは、なんとなくわかっている。



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by mariastella | 2017-05-08 23:47 | フランス
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