L'art de croire             竹下節子ブログ

共謀罪成立とフランスと韓国

最近、フランスでも大統領選や総選挙、テロのニュースなどを連続して追っているのに加えて、日本でも内閣府にまつわるスキャンダルや共謀罪の成立や今度は都議会など、気になるテーマが続いたので、ついつい、いろいろなことを考えてしまう。

共謀罪が強引に成立したことで敗北感や恐れ、脅威を表明する人も多いが、私は正直言って、それ自体に限ったら、これだけ議論が生まれている状況についてはむしろポジティヴな印象を持っている。

それは、フランスの「緊急事態」がもうずっと続いているせいでもある。

アメリカの9・11後の「愛国法」などには危機感を抱いたけれど、
緊急事態宣言中、「テロとの戦争」宣言中であるはずのフランスにおける危機感は、実はあまりない。

「一般の人には適用されませんよ」、というやつだ。

もともと「表現の自由」や「生き方の自由」をイスラム原理主義過激派から守るというのが出発点であるせいか、戦争だ、非常事態だと言っていることとやっていることがだいぶ違って、そうとうヌルイ。

ジャーナリズムの言論は完全に枠外となっているし、もともとデモを規制する項目があったのに、フランス人が「外へ出てデモをする」ことを自主規制することも考えられず、全く変わっていない。「意思表示」の自由は共和国絶対の伝統だ。
2015年の無差別テロの後も、「外に出るな」みたいな指示があったようだが、あわてて日本人観光客や修学旅行生たちが日本大使館の指示でホテルにこもっていたという話は聞いたけれど、うちから出なかったなんていうフランス人の話は聞いたことがない。
「一般の人」が堂々と騒ぐのがフランスだ。

こういうと「さすがフランスだ」と思うかもしれないが、フランスだけではない。
私は韓国の民衆が昨年から今年にかけてパク・クネ大統領を大挙して糾弾し、ついに罷免に追い込んだのを見て、結局、どんな法律があろうとも、市井の人々の意志が強ければその表示はとめられないし、ついには国を動かすのだなあと思った。

なにしろ、韓国と言えば、いまだに北朝鮮と「休戦」状態だが戦争は終わっていないのだし、言い換えれば常に「非常事態」、戒厳令OKの国だ。
そして、日本の治安維持法をモデルにしたという「国家保安法」というのがある。共産主義を賛美する行為やその「兆候」まで取り締まりの対象になるというやつだ。
後はどうにでも拡大解釈可能で、実際、独裁政権からは恣意的に使われた。
「民主化」した後で廃止の動きもあったけれど、今もしっかり合憲とされ、有効だ。

1970年代に京大の医学部からソウル大学に留学していた私の知人は、この国家保安法を適用されたいわゆる「学園浸透スパイ事件」のでっちあげに巻き込まれて死刑判決を受けた。

彼が死刑囚として獄中にあった時に、今回失脚したパク・クネ大統領の父親であるパク・チョンヒ大統領(この人は大統領の直接選挙を廃止して永久政権化しようとした軍事独裁者だ)が暗殺された。
彼は13年も投獄された後、パク・クネ政権の時代にようやく再審無罪を勝ち取った。
もともと、確か彼が「北朝鮮」に行っていた、と断罪された時期には日本で国体に出場していた(陸上選手だった)ということで、冤罪は明らかだったのだけれど、当時は真実や事実で無罪を「立証」することなど無力だった。無法地帯で合法的な手立てを探しても意味がない。

その当時、私の話を聞いた周りのフランス人の方がはるかに積極的に彼の救援の手立てを模索してくれたことの驚きを私は今もはっきり覚えている。

その韓国の人たちが、今回は堂々と大統領を弾劾したのだ。

悪法があっても、その気になればそれを適用できる為政者を罷免することもできる。
その適用を不可能にすることだってできる。

悪法や悪法の成立事情やそれを可能にした為政者に異を唱え、
自由と尊厳を守る断固とした意志を、
持続的に、
忍耐強く、
表明するならば。

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by mariastella | 2017-06-21 01:39 | 雑感
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