L'art de croire             竹下節子ブログ

披露宴のスピーチ

この週末に出席した結婚披露宴。

これまで日本でもフランスでも、結婚式や披露宴というものに何度か出席したことはある。

花嫁花婿の一方が叔父のような年上世代だったり、友人、知人の同世代だったり、甥や姪らの年下世代だったり、時代も場所も関係性もいろいろだった。
その中には、離婚したカップルもいるけれど、末永く続いているカップルがほとんどなのは、昨今の離婚率からいうと圧倒的に高い「成功率」だ。

でも、今回の披露宴は、いろいろな意味で感慨深いものだった。

国籍や出席者がわざわざ駆けつけてきた国の数の多さや、花嫁花婿の人脈のせいだ。

これまで、「・・家と・・家」の結婚式という日本式のものはもちろん、わりと親の世代の力関係が目立つものが多かった。

もちろん「友達婚」のような若い人主体のものもあったが、それは小規模だし、親世代は本当の身内しか出席しないことが多い。

でも、今回の結婚式は、花嫁花婿のカップル主体なのに大掛かりで贅沢なものだった。
そして、それぞれの親たちもとても裕福なのだけれど、今は、昔でいうと晩婚なので親たちがすでにリタイアか半リタイアの状態にある。
今活躍中の現役感、権力感、と言うのは親側になく子供の世代側にある。
今回の披露宴のスピーチでもはっきり口にされていたけれど、主体となっていたのはいわゆる「マクロン世代」の30代後半の若者たちである。
一昔前ならそれでもまだまだ文字通り「若者」だったけれど、今や、フランス大統領や閣僚の世代である。
IT時代の勝ち組というのも30代で自力で富を築いている。
親にも充分金があるのにかかわらず。(もちろん人生のスタートに教育などで十分金をかけられて育っているけれど)

で、今回の花婿も、MITの博士号がありボストンでマッxンゼーの第一線で働くエリートで、その周りの若者たちもみな、金融系、コンサルタント系が多く、
私から見たら

「シカゴ学派の集まりですか」

「あななたたち、今、南スーダンで何が起こっているのか知らないの?」

「この子たちって、どこで戦争が起こっても、武器は売れるは、戦後の復興でも儲かるは、で、うはうは豊かなままなんだろうなあ」

と突っ込みをいれたくなるような面々なのだ。

しかも、健康そうで、幸せそうで、若いだけでなく見た目もかっこういい。

金儲けに汲々としていても心は貧しいんじゃないか、

とか、

健康や愛や美貌はお金じゃ買えないからね、

失敗を知らなければ試練に遭った時にもろいんじゃないか、

などと年寄りが言いそうなこととは縁のない「強者」ぶりだ。

もちろんコンサルとかだけではなく、大学教授とか研究者もいるのだけれど、象牙の塔にこもって論文書いているような人ではなくて、世界中の学会に飛び回っているような野心的な若い人ばかり。そしてすでに具体的な成果や評価を得ている「勝ち組」なのだ。

女性たちもまったく同じプロフィールだ。

いわゆる「製造業」に関わる人はゼロといっていい。

日本人は私一人だけれど、それよりも、前日にバッハのブランデンブルグやテレマンの組曲を弾いて幸福をかみしめる世界に住んでいる私とまったく異質の世界であることに頭がくらくらする。

披露宴でいろいろな人がカップルのエピソードを英仏バイリンガルでスピーチした。
花婿の父(フランス人、この人も、フランスだけでなくカナダに留学し、ヨーロッパの各国や中東などで働いていた。)も花嫁の父(カナダ人)も、それぞれフランス語と英語でスピーチした。彼らは私と同世代だ。

花婿の父のスピーチの中で若者に受けていたのは次のくだりだった。

「女性は船のようなもので、男性という船頭がいないと動きません」

ここで一斉にブーイング。

「でも、船のない船頭って…」

ここで笑いに変わる。

「一人で行く方が速く行けます」

「二人で行くと、遠くへ行けます」

だって。

花嫁の父の方は確か、この結婚のことを「最終取引で、回収不可能な商品の納入」みたいな比喩をして笑いをとっていた。

日本で若い世代の結婚式や披露宴に出たことがないので、今の時代に私と同世代の親たちがどんなスピーチをするのか知らない。

ともかく、この週末の一泊ステイのパーティで私が持参した本は、日本語の文庫本一冊。

佐伯啓思さんの『貨幣と欲望--資本主義の精神解剖学』(ちくま学芸文庫)だった。

おもしろい。

でも、この本で指摘される「根」を失った過剰性とか、存在の空無を埋める消費とか、過剰性を生み出す貨幣愛、とかは、このパーティ会場にいたいわゆる「リア充」で輝いている若者たちと関係がありそうでなさそうな非現実的な感じもするのだった…。

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by mariastella | 2017-06-27 02:19 | 雑感
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