L'art de croire             竹下節子ブログ

パリのトランプ大統領

マクロンの招待に応じたトランプ大統領が30時間パリに滞在した

まずアンヴァリッドでナポレオンの棺を見る。
75年前にヒットラーを感動させた場所だ。

それからエリゼ宮でマクロンと会談、夕食はアラン・デュカスが腕をふるうエッフェル塔。
そして翌日の革命記念日のシャンゼリゼでの軍事パレード。

前にも書いたが、世界一の軍事大国アメリカは、独立記念日にでもこういうパレードはしない。第一次湾岸戦争での凱旋パレードのようなものはあったけれど。

マクロンの演出は見事に成功した。

天気がよかった。

テレビで中継を見ただけでもある意味で感動した。
もちろん私は軍事パレードというものは大嫌いだ。
けれども、テレビのスクリーンが大型化し、ハイビジョン化し、天気がいいので、光と影のコントラストが美しい映像で、スペクタクルとして見応えがある。

勇ましいのが好きそうなトランプなら本気で感動しそうだ。
アメリカの独立記念日でもやりたいと言い出しそうだ。
中央集権ではない連邦国家だから無理だろうと思うけれど。

トランプ来仏についてはパリ協定を離脱したトランプなどにあいさつなどしたくないと、ユロー環境相などが異を唱えていた。
また、最近マクロンが軍事予算の削減を言い出して、財政の緊縮のためには軍事省も他の省庁超と同じ、と言ったことに対して、将軍たちから猛烈な反発が起きていた。
他の公務員は命の危険がない。軍で働くものは命を懸けている。実際、毎日フランス兵がどこかで危険な目に合っている。他の省庁と同じとはなにごとだ、というのだ。それをまたマクロンが公開の場で「諫めた」形になったので張り詰めた空気になっていた。

それを考慮してか、パレードの後の演説でマクロンは、フランスが自由と平等の理念を守り抜くために身を捧げている人たちに感謝した。

いわゆる軍隊だけでなく、警官や、消防員、軍隊付きの医者、獣医、法務官までパレードに加わっている。

毎年のことながら、共和国の数学エリートであるポリテクニックの学生も行進する。エリートを輩出するためのこのグランゼコールが、歴史的に士官学校でもあることが、軍隊で連想する「力」に「知力」のイメージも重ねるところがフランスの特色でもある。

まあ、それらの全体を見ると、「力の誇示」は緩和されるから、たとえば北朝鮮の軍事パレードのような気味悪さはない。
でもその「正しさ」の誇示が鼻につく。

それに比べると、「イギリス植民地」上がりのアメリカ、ラファイエットら革命前のフランス軍の援護も得て独立を果たしたアメリカという国のトランプ大統領は、ある意味くみしやすい。

国内で逆風に吹かれている最中だから、フランスに来ることは息抜きでもあっただろう。性格的にもaffectif(感動しやすい?)人だから、メイ首相やメルケル首相とうまくいっていない今、心情的にマクロンに傾くだろうなどとフランスのメディアに言われている。

しかも、表向きは、第一次大戦でアメリカ軍がフランスにやってきて戦ってくれた100周年ということである。

「トランプ大統領」を招待したのではなく、長年の因縁のある軍事的な同盟国「アメリカ」を招待し、感謝したのだ。

「緊急事態」下である今でさえアメリカ大統領を招待してこのパレードを無事に成功させるということは、2024年のオリンピックの開催についても万全のセキュリティを保証できるというパフォーマンスでもある。

イメージとしても小柄だが老獪で精悍なプーチンと違って、大柄で大味なアメリカンというトランプを前にして堂々と「先輩国」のリーダーとしてふるまうマクロンは、ますますジュピターぶりを発揮できた。

演説では、フランスのために命を落とした人々だけでなく、テロの犠牲者も等しく、その子孫を「共和国の子供」(共和国の里子たち参照)として守り続けることを強調した。(そのことは午後に行われたニースのテロの一周年式典での犠牲者への追悼でも繰り返された。)

すごくよくできている。

シャンゼリゼを行進していた兵士たちの多くは20代だ。
リスクの大きい任務についている若者たちが整然と歩いているのを見ると、いろいろな思いがよぎる。
 
お祭り好きのフランス人は、前夜祭でも花火を打ち上げ、踊りまくり、飲みまくっているが、それでも「民衆が立ち上がって革命によって近代理念を獲得した」というのを政治的にアイデンティティとして選択した教育の成果は揺るがないのだなあ、と感心する。

革命の後も恐怖政治や帝政や王政復古や第二帝政や、あれだけいろいろ試行錯誤してきたくせによく「共和国神話」を養い続けているばかりか、必要とあれば太陽王ルイ14世とかジュピターまで総動員してフランス中華思想を繰り広げる根性はなかなかのものだ。

マクロンは今のところ、それを巧妙にわがものにしている。

いつまで続くのだろうか。

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by mariastella | 2017-07-15 06:36 | フランス
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