L'art de croire             竹下節子ブログ

機内で見た映画 その2 『君の膵臓を食べたい』『アウトレイジ 最終章』

日本映画を2本。

『君の膵臓を食べたい』はベストセラー小説の映画化だそうだ。

タイトルが衝撃的で、膵臓の病で死を宣告されている少女とその秘密を偶然知ったことで無理やり「なかよし君」認定されてしまう少年のストーリーで、その少年の12年後に母校の国語教師となった姿も違和感がなくていい。

二人の高校生の演技がいい。

自分の世界に閉じこもっている少年と、クラスの人気者の明るい少女。

この少女の方が実は死を間近にしてある意味で「老成」しているのだけれど、無邪気にふるまって少年を翻弄する。

高校時代である2005年の時点で学校内で自由に携帯電話が使えているんだなあ、という驚きがあった。

この少女の、一見無邪気風の深刻さと残酷さ、それを見抜けないまま意のままにあやつられる少年の孤独と困惑とのコントラストが最も印象的だった。

このタイプの男を、自覚しないままに思うがままに操るタイプの女は確実にいる。

かってに「なかよし君」認定してしまう力関係、それは、青春時代の男女だけではなく、何歳になっても、ある種の制約の中にある男女の仲に倒錯的に存在する。


映画の感想よりも、そっちの感慨の方がだんだんと大きくなってしまった。

『アウトレイジ 最終章』

悪夢のもとになるバイオレンス映画はこれからの余生でできるだけ避けようという方針からこの映画もスルーしようと思っていたけれど、機内の小画面なのでなんとなく見始めた。

バイオレンスよりもホラー映画の方が避けるべきで、バイオレンスはそのシチュエーションによるということが分かった。

この「やくざ映画」には、指詰めや拷問などの残酷なバイオレンスはなく、拳銃乱射などの抽象的なもので、東映やくざ映画のように、打たれてもなかなか死ねないという生々しさがない。

それに、まさに、ジャッキー・チェンの香港映画と同じく1970 年代によく観た「仁義なき戦い」シリーズだの「県警と組織暴力」などの懐かしい東映映画との同窓会のような気もする。つまり、バイオレンスと言っても、やくざという特殊社会の様式内の表現なので、あまり怖くないのだ。日本人は兵隊とやくざを演じればだれでも名優になる、というのを昔読んだことがあるけれど、上意下達、親兄弟の義理などの日本社会を縛る原風景的拘束感と、大声、凄み、脅し、恫喝、罵詈雑言などが醸し出すカタルシス感がセットになっているので、だれでも隠れた本音みたいなのを感じるのかもしれない。

花菱会若頭でクーデターを起こしてしまう西田敏行の悪人面がすごい。

これが『釣りバカ日誌』の浜ちゃんを演じられる俳優とは。

浜ちゃんがやくざになれるならフーテンの寅さんのやくざ姿だって想像してしまう。

ビートたけしの演じる大友の舎弟である若者が、他のチンピラとは違う人懐こさ、兄貴分への愛着によって一種のさわやかさを発している。その役を演じる大森南朋は麿赤兒の息子だそうで、それも懐かしい。


アウトレイジのシリーズを見るのは初めてだけれど、北野武の暴力団映画はフランスで『ソナチネ』を観ている。それでもなお印象が過去の東映映画の枠組みへ収められてしまうというのは、「やくざ映画」の枠組みというのが独特の「文化圏」内にあるからなのだろう。

ストーリーは変化があって分かり易く、役柄はみなキャラが立っていて、その上韓国の済州島のシーンも興味深かった。

こういう国際的なフィクサーってホントにいるんだろうなあ。


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by mariastella | 2017-11-08 00:33 | 映画
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