L'art de croire             竹下節子ブログ

セバスティアン・クルツの「小国」

オーストリアの新首相となるセバスティアン・クルツ。

31歳。

マクロンも39歳で若さに驚いたけれどいわゆる童顔ではない。

でも、このクルツって、童顔っぽい。
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(これは11/10付のル・モンド紙のロイターの写真を拡大して撮ったものです)

それでも髪型が絶対にゲルマン風。フランスならあり得ない感じ。

中道右派で難民受け入れに厳しく、極右FPOeとの連立政権になる予定。

FPOeって、すでに1983-86年に左派と、2000-2006年に右派と連立与党になっている。EU離脱派でネオナチとも近く、イスラエルからボイコットされている。

でも、このル・モンドの記事によるとクルツは親EUだと言明している。
この50年で3度目の政権与党になるそうで、自分は若いけれど、古参のブレーンがついているから大丈夫、新鮮な風をオーストリアにもたらす自信があるという。
FPOeは連立の中で少数派だから制御可能だとしているようだ。

オーストリアはEUの中で、人口比でいうと最も外国人の割合が大きいのだそうだ。その上2015年以来15万人の難民申請者が押し寄せているから、その対策をするのは当然だと言う。
オーストリアは、ここ5年、いわゆるベーシックインカムの制度を実施している。すべての居住者は、働かなくとも毎月900ユーロ(12万円くらい)近くを支給される。それはEUの中の東欧など他の国の国民平均所得の2倍に近く、そのせいで、「社会政策ツーリスト」が絶えない。クルツはそれを廃止するつもりだ。

そんなことはすっかり忘れていた。
一番驚いたのは、マクロンの政策について聞かれたクルツが、

マクロンの提唱するEUの構想に賛成すること、フランスよりもずっと小さい国の代表者として自分に彼を助けることができるなら、するつもりだ、

と答えていることだ。

大国のイメージは面積から言ってもアメリカ、ロシア、中国、インドなどで、ヨーロッパ大陸には多くの国がひしめき合っているイメージだから、その中でオーストリアが「うちはフランスよりもずっと小さい」などという認識を持っていて口に出すのが意外だった。

日本だって、うちは中国よりずっと小さい、とか、アメリカよりずっと小さい、などと、わざわざ政治家が口にするのを耳にしたことがない。

それに、私のようにヨーロッパ史にしょっちゅう首を突っ込んでいる者にとっては、オーストリアと言えば、オーストリア=ハンガリー帝国だとか、神聖ローマ帝国などのイメージ、ハプスブルク家の歴史があるので、むしろ、ルイ一四世やナポレオンをも悩まし、姻戚関係を結んできた「列強」のイメージがある。

確かにナチス・ドイツに併合され、戦後は、確かに「小国」(面積は8万3千平方キロ。ちなみにフランスは55万、日本は37万8千、アメリカは983万だ)には違いないが、その「永世中立国」のイメージやウィーンの華やかさなどで存在感は大きい、と思っていた。

前にプーチンが「うちはお金がないのだからアメリカと比べることもできない」などとオリバー・ストーンに話していたことを思い出した。

政治のパワーゲームってなんだかイメージ産業みたいなところがあるので、どんな風にも見せることができるのだなあとあらためて思う。

オーストリアが「小国」になってからのここ30年ほどしか生きていないクルツのプラグマティズム、リアルポリティクスとはどういうものなのだろうと興味が出てきたのでウォッチングを続けよう。


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by mariastella | 2017-11-14 01:22 | 雑感
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