フランスでは、クリスマスにやってくる「サンタクロース」は「ペール・ノエル」とか「パパ・ノエル」と呼ばれる。ノエルは「誕生」で、イエス・キリストの誕生日。
「ペール」はお父さんだ。
「プチ・パパ・ノエル」という有名な歌があって、ぼくの靴下、忘れないでね、でも外ではちゃんと暖かくして、風邪ひかないで、風邪ひいたら、それは少しは僕のせいだから、みたいな子供によるかわいいサンタ・クロースへの呼びかけだ。
よく知られていることだが、サンタ・クロースはコカ・コーラだかの宣伝で広まったアメリカ発のキャラクターで、ヨーロッパでは子供にプレゼントを配る聖ニコラウス(フランスではサン・ニコラ)に当たる。
サン・ニコラの祝日は12/6で、ひと昔前までは子供へのプレゼントも、子供のための年末のお祭りも12/6だった。
で、アメリカ発のサンタ・クロース(ニコラウスからクラウス、クロース)をサン・ニコラとは呼べないので、たんに「クリスマスおじいちゃん」みたいなニュアンスで「パパ・ノエル」と呼ばれていたのだ。
この時点で、聖人との接点のない、スカンジナビアに住んでトナカイのそりに乗ってやってくる年末のプレゼント配りのキャラだ。
それが、今年からは、「ブラック・マンデー」のセールと同じように「サンタ・ロース」が登場した。フランスとは関係なかったハロウィーンがフランスでお祭りになったのはもう10年以上になると思うが、ブラック・マンデーは今年初めて大手スーパーチェーンがキャッチコピーに採用した。
そして、今年の年末の家族向きコメディのフランス映画にはじめて『SANTA & Cie』というのが登場した
。警察に連行されたサンタ・クロースが姓名をきかれて、名はサンタ、姓はクロース、などと答えている。
コマーシャルにも、
「あ、君はひょっとして、サンタ・クロース?」と聞かれた女性が
「私はシャンタル・クロッシュよ、」などと答えるのがあった。(クロッシュという何かのブランド)
世のアメリカ化という名のグローバリゼーションの波は世界を呑み込む。
おかげで、昔はフランス人からはぞっとされていた「魚を生で食べる」というのも、アメリカのsushiブームを経由して、刺身やすしがすっかり市民権を得ている。
ブラック・マンデーをやるならそのうち「感謝祭」もやったりして。
何に感謝するのか知らないが。そういえば日本には同じ時期に「勤労感謝の祝日」があったがフランスには何もない。
ともかく、今や、商機になるものなら何でもいい、ペール・ノエルとサンタ・クロースを両方とも動員するのも全然OK、という感じだなあ、と時の移り変わりに感慨を覚える師走だ。