L'art de croire             竹下節子ブログ

「主の祈り」をめぐって その5

さて、ルヴェリエ師の話を聞きたくてわざわざやってきたのに彼がいなかった12/3のミサ、いよいよ、「主の祈り」が始まる。

司祭はあっさりと、

「いいですね、ne nous laisse pas entrer en tentation ですよ、

わかってますね、ne nous laisse pas entrer ententation と言うんですよ、

ne nous laisse pas entrer en tentation ですからね」

と三回くらい繰り返してから始めた。

何しろ前の週とか前々週に来ていないから分からないけれど、相当前から、12/3から変わりますからね、と言われていたのだろうな。でも、普段は教会に来ていないけれど待降節だから来てみよう、という人がいたら、「えっ、何? 何のこと? 」と思ったかもしれない。

無事に唱和が終わって、それでも別に「はい。よくできました」と言われるわけでもない。

その後が聖体拝領。

これも、歌を歌わないので他の人たちをぼーっと眺めていると、口をもぐもぐしている人が一人いるのに気がついた。

私はホメオパシーの薬の要領でホスチア(聖体パン)が舌の下に入れて溶けるのを待つ。ホメオパシー的にはこれが一番吸収が早いとか。でも、今まで、かじるとか噛むとか考えたことがなかったけれど、ひょっとして「食べ方」ってあるのだろうか。

後で、フランス人(第二バチカン公会議前のカテキズムを受けた世代)に聞いたら

「それは噛んじゃいけない」
「どうして?

「キリストの体なんだからリスペクトを欠くから」

「えーっ、そんなこというなら、キリストの体を食べること自体がリスペクトを欠くじゃない。大体これはミトラ信仰の名残のカニバリズムで云々…」と私。

さらに、「それに、これって、ただ溶けるのを待っていたら口蓋にくっついたりするでしょう。ドライマウスの人はどうするの? 喉に張り付いて窒息死する病人とか老人とかの例は絶対にないの?

考えてみれば、何十年も飲み食いしない完全断食者の神秘家がホスチアだけはするりと喉を通っていく、という記録はよく読んだことはあるけれど、その時はあまり疑問を感じなかった。

第一次大戦の従軍司祭が、傷病兵の間をまわって赦しの秘跡を与えて無理やり口をこじ開けてホスチアを入れるシーンを最近の映画で見たけれど、あれだって、誤嚥で窒息させそうだ。

ギリシャの正教では信者が自分で普通のパンを持って行ってそれを聖別してもらって食べるのだから、しっかり噛まないと無理だろう。

実際、試しに検索しても、食べ方など決まっていないようだ。フランスのカトリックのホスチアは薄くて軽くてすぐに溶けるし、一度口に入れた後では誰も口を開けないから、みなが同じようになるのだろう。でも、寝たきりで嚥下能力のない老人とか胃瘻の人はどうするのだろう。小さく砕いてからあげるなんてことはあり得るのかなあ、などといろいろ雑念が。

ホスチアを口にしただけでキリストと合体して恍惚となる古来の神秘家はすごい。

それにしても、「キリストの体」を食べるという発想はぶっとんでいる。

で、シンメトリーをなす「主の祈り」の真ん中であり、ユダヤの修辞法的には最も大切である「わたしたちの日ごとの糧を今日もお与えください」という部分にもう一度注目しよう。

これを、「父なる神に今日のパンをねだる」のでもなく「荒野で降ってくるマナ」でもなく、これこそが毎日のミサでいただく「キリストの聖体」なのだという解釈もある。

わたしたちの罪をおゆるしください。わたしたちも人をゆるします

6. わたしたちを誘惑におちいらせず、

7. 悪からお救いください。

7 がかなえられれば 1 が成就し、

6 がかなえられれば 2 が成就し、

5 がかなえられれば 3 が成就し、

それを可能とするのが 4 で、キリストの体を自分の中に受け入れるという毎日の秘跡だというのだ。

キリストと一体になれば神の国が実現し救われる。(続く)


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by mariastella | 2017-12-07 00:05 | フランス
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