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L'art de croire             竹下節子ブログ

絶対平和主義という覚悟

先日、ウーマン村本という人のテレビ(『朝生』)での発言がリテラに載っていたのを読んだ。


日本が武装解除したからといってどこの国がすぐに侵略してくるんですか、という疑問はすごく分かる。こういう感じだったらしい。

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井上「ちょっと質問していいですか。村本さんはじゃあね、非武装中立ね、それは本当に一番筋が通ってるけど、私は間違った理想だと思いますが、ただ多くの人は本当に非武装中立が何を意味するか理解しないで言っているわけね。じゃあ、攻撃されたらどうしますか?」
村本「なぜ攻撃されるんですか」
井上「いや、それを言ってんの。侵略されたら、いや、侵略されないに越したことはない。じゃあ、もし侵略されたらどうするんですか。白旗を挙げて降参なの?」
村本「僕はそっちかなと思います」
井上「そしたら侵略者に対して侵略のインセンティブを与えちゃうよね。それでいいの?」
村本「なぜ侵略される、意味が分からないんですよ」
落合陽一「だって知らない人に通り魔で刺されたりするでしょ?」
村本「だからなぜ中国や北朝鮮が日本を侵略するという発想になるのか、私は分からない」

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で、その後、

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田原「ちょっとまって。具体的に言うと、もしも日本が米軍と自衛隊がいなかったら、尖閣は中国が取るよ」
村本「分かりました。じゃあ僕は逃げずに答えますけども、僕は、僕の意見はですよ……」
田原「取られてもいいわけね?」
村本「僕は取られてもいいです。僕は明け渡します。僕はですよ。うん」
落合「なんで?」
村本「だって、だってもし皆さんの身内に、自衛隊とか軍隊がいて、その身内が人を殺して国を守ることって……」
井上「じゃあ自分の身内が殺されるってときに、敵を殺さないと自分が殺される状況に置かれたらどうするの?」
村本「じゃあ、殺されます」
落合「なんで?」
村本「だって誰かを殺すわけでしょ?」
井上「いや、そうことを言う人は多いの、ね? で、僕はそれはほとんど欺瞞的で……」
村本「僕の考えは僕の考えでいいでしょう!」

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とあり、この村本さんはネットでしっかり「袋叩き」にあったのだそうだ。

この村本さんの言葉を聞いて、沖縄に住む方から少し前にいただいたメールに書いてあった言葉をすぐに思い出した。

「基地問題
勿論要らない! 中国や北朝鮮の脅威を持ち出し、辺野古必然を言う方々多いですが、基地がない為に 日本国がやられるなら潔く受け止めたらよし。」

というものだ。実はこの言葉は私にとってすごく衝撃的だった。

私は、911の後に緊急出版した『テロリズムの彼方に、我らを導くものは何か』という本の中で、自分の平和主義者としての立ち位置を決めた。

自分に直接の脅威が迫っているわけではない時に決めておかないと、実際の危機を煽られるたりすると、理性など吹っ飛んでどう行動するか分からない、と思ったからだ。この本と、『アメリカに「NO」と言える国』で考察したフランス型ユニヴァーサリズムと、無抵抗で殺されたナザレのイエスの絶対平和主義を忘れたくないからだった。

でも、いくら心で思っていても、実際に、一応平和で豊かで自由な国で、平和で豊かで自由に暮らしている結構な身分で、「たとえ殺されても殺す側にはなりたくない」などと口にする勇気などない。

村上さんが、「そうことを言う人は多いの、ね? で、僕はそれはほとんど欺瞞的で……」と言われてしまったように、偽善的、欺瞞的、理想主義のお花畑などと言われるだろうと自分で先回りしてしまう。

こんなことはなかなか言えないだろうと思っていた。

例えていえば、広島の被爆者の方が、「核の傘に入らないとまた攻撃されるというならそれでもよし」と言っているような衝撃だ。

でも、南北朝鮮が話し合いに入り、ひょっとしたら戦争状態が終結するかもしれない、という状況が垣間見えてきた今、村本さんの言っていることの方が正しかった、と言われる日がいつか来るかもしれない、とかすかな光がかすめていった。


by mariastella | 2018-01-07 00:05 | 雑感
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/

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