L'art de croire             竹下節子ブログ

カリマさんの『シャルリー・エブド紙』インタビュー

(これは前の記事の続きです。)

カリマさんは、アングロサクソン風「共同体主義の国」で、女性のイスラムスカーフが「あれはあの共同体の文化、伝統だから」として放置されることにショックを受けている。


女性差別のシンボルなのに、自分たちの多様性容認、寛容のシンボルにされているからだ。

トランプ大統領の反イスラム的政策に抗議するアメリカでのデモで、イスラムスカーフをつけた女性たちがシンボルとして行進した。

これは明らかに間違っているのに、これを批判したら「アンチ・イスラム」だと逆に批判される。(このことは、体を隠す水着モノキニ論争の時にフランスでも問題になった。)

フランスでは、普通のムスリムは穏健派で、過激派と混同するな、伝統に従って自分たちの文化を守って普通に暮らしているだけだ、というアメリカ型の左派知識人が増えてきた。

で、これについてのカリマさんへの質問と答え。

>>>

Q.「穏健なイスラミスト」というのはどうですか? 穏健であれば宗教に基づいた政治体制もあり得ると思いますか?

A. 私にとっては、否、です。

私の父は、過激派とずっと戦ってきました。その前はアルジェリアにおけるフランスの植民地主義と戦ってきました。彼は私に、政治的に考えると、穏健派イスラミストは、イスラム過激派よりももっと危険なくらいだ、と言っていました。なぜなら、「穏健」であるなら受け入れることができると人々が考えてしまうので、穏健派こそ、宗教支配のプロジェクトを進めることが可能になるからです。

テロリズムとそれを促すイデオロギーに関係があることを絶対に見逃してはなりません。残念なことに、宗教支配(宗教法の権力的適用)という考えは、今やかなり普通のことのように見え始めてきています。キリスト教原理主義の言葉がどんどん激しいものになっているアメリカでその傾向があります。自分自身は原理主義者ではない多くの人も、それが有効で大衆に受けるということでそういう言説を使っているのです。そういう人たちこそが、本当の過激派に門戸を開いているのです。

そしていったん開いたその扉を閉じるのはとても難しいのです。


<<<

結局、何が悪いかというと、すべての宗教の、「時の権威者が宗教の名によって自由を規制すること」なのだ。


世界の大宗教はみな根本的には「人間の共存」に合致するメッセージを含んでいるのだけれど、それを「適用」する側がどうにでも曲解できることが問題だ。

モーセの「十戒」の「殺すなかれ」だって、人間が互いに殺すことをしっかり禁じているサバイバルの基本なのに、

「正当防衛ならOK」とか

「神や神の代理人を冒涜するような者は抹殺すべし」とか

「国家や権力組織が合法的に所有する暴力装置によるならば戦争も死刑もOK

のように、実用レベルではもう改変されまくっている。


「解釈改憲」みたいなものだ。


まあさすがに、


「十戒」は神から授けられたもので民衆の意志でないから変えようとか、

現実に即していないから、変えよう、などとは言われないけれど。

この他にもいろいろあるのだが、旧植民地イスラム圏からの移民を多く抱えるフランスの非共同体主義的(すなわち普遍主義的)統合政策をずっと観察してきた非キリスト教文化圏出身の私にとっては実に興味深いコメントがいろいろあった。

その他にもこの『シャルリー・エブド紙』の記念号は考えさせられる記事が満載だった。
犠牲者の死は決して無駄になっていない。

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by mariastella | 2018-01-12 00:05 | フランス
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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