L'art de croire             竹下節子ブログ

ストレス解消法と霊操とマダム・ギヨン

パリは東京と同じくらいに雪に弱い。

先日、久しぶりの大雪(パリ当社比だけれど)の日に運悪く、バロックバレー(結局雪のために中止になっていた)のレッスンに出かけてしまって、帰りの電車が何だか大変なことになっていた。遅れが出ているのだけれどちゃんと表示されない、表示通りにも来ない、しかも通勤帰りの人と重なって、やっと来た電車に乗れない。次の電車は30分後くらいと言われるが、ホームいっぱいの人を見ると次のにも乗れないと思う。
乗れば10分でうちの駅に着けるのに、どうしていいか分からない。

他のメトロを乗り継いでいこうとも思うが、寒いし、疲れていたのであまり動きたくない。すると、うちの駅を通過する急行が来た。乗客がすくなく暖かそうなので乗った。うちの駅を通過してから今度はパリ方向の各停に乗れば人は少ないと思ったのだ。

まあそれからいろいろあって、うちに戻れたのはかれこれ1時間半後くらいだった。
凍えて、いつどうやって帰れるのか分からないストレス、周りの人も当然落ち着かない様子。
延々と不確かな待ち時間の間、運悪く、持っているのはバロックバレーの振り付け譜と、マダム・ギヨン(ギュイヨン)の祈りの方法のハンドブック『短くてとても簡単な祈りのメソード』だけだった。

カトリックの瞑想法ガイドとしては、十字架のヨハネ、アヴィラのテレサ、そしてイエズス会のイグナチオの『霊操』が有名で、前2人のはよく読んだけれど、手軽という感じではない。マダム・ギヨンのものは最近新版が文庫で出て、すごくわかりやすいというので買った。(もとは17世紀フランス語、今回は少し現代語風のもの)

そして、このとても具体的な「罪のチェックの仕方」などの項目について、『霊操』と比較しようというのが私の最近の関心のひとつだった。
もし私が今どこかの大学の神学部の学生だったら、論文のテーマは「イグナチオの『霊操』とマダム・ギヨンの『祈りのメソード』の比較研究」だなあと思っていた。

両者の一つ一つの「方法」について、16世紀スペインの元戦士の男と17世紀フランスの聖職者ではない女という、時代、場所、ジェンダーによるバイアスをどのように受けてどのようなヴァリエーションを構成しているのか、それと今日の各種のマインドフル系コーチングとの関係など。

で、雪による交通マヒという精神的にも肉体的にもストレスフルな状態で、そうだ、今、この本を読んで心を安定させることができればすごいぞ、と思って、ページを繰ったら…

全然ダメだった。

唯一おもしろかったのが、自分の罪を探る時に、つまり良心によってチェックする時に、自分であれこれ掘り下げる必要はない、というところだった。ただ、神の方に心を向けていれば、罪という氷が自然に神の愛の太陽の熱で溶けて行って、蒸発したらところで「免償」になる、というのだ。

自分は罪深いとか言って、自傷、自罰するようなのとは正反対だ。
マダム・ギヨンも「北風と太陽だ」といっている。

と、まあ、このレトリックだけが私の心を紛らわせたのだけれど、その他の、心を平静にするにはどうする、この世の悩みに囚われないためにはどうする、神と合一するにはどうする系のメソードにはまったく惹かれなかった。

「いつになったら電車が来るのか、動くのか、帰れるのか、寒い、風邪ひくんじゃないか」とか際限のないネガティヴな思考のループから逃れるような祈りを試そうというモチヴェーション自体も起こらない。

ああ、ペンシルパズル本を入れておけばよかった。
雑誌をダウンロードしてあるタブレットを持ってくればよかった。

空港に行くときにはいつもパズル本を持っている。
遅れが出るとか、「いつになるか分からない」とかいう時のイライラや不安をカットするのにすごく有効だ。そういう時は読書などには集中できない。
試行錯誤しているので、どの種のパズルのどのレベルのものが、すぐに軽いアディクションをもたらせて、何時間でも続けていられるというのが分かっている。

結局、脳のどの機能に優先案件を与えて、他の機能を抑圧できるかということだ。

私の小さなクライシスの対応に、パズルほどの効果ももたらせてくれなかった、マダム・ギヨン。『霊操』との比較研究もお蔵入りになる可能性大だ。
(自分の「霊性の低さ」を棚に上げて勝手なこと言ってごめんなさい、マダム・ギヨン)



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by mariastella | 2018-02-14 00:05 | 雑感
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竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
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