ラモーのモテットとアンドレ・カンプラのレクイエム(死者のミサ)を聴く2月8日、パリのフィルハーモニーにラモーのモテットとシャルパンティエの典礼組曲、カンプラのレクイエムを聴きに行った。 シャルパンティエの曲は、コーラスなしで、最初の序曲はラモーの後なのでちょっと平板に聞えたけれど、最後の「アーメン」という曲は、構成もリズムも完全に舞曲のアルマンドだ。バロックの宗教曲が、オペラやダンス曲を意識して駆使して取り入れたものの典型かもしれないる。 これなら待降節や四旬節の時にオペラ上演が禁止で宗教曲ばかりが上演された時も違和感なく楽しめたのがよく分かる。 カンプラはパリのノートルダム大聖堂の音楽監督だったくらいだから宗教曲も多いが、オペラ曲も多く、私もいろいろ踊ったことがある。 このレクイエムは傑作だ。冒頭からもう、オペラの魔法の世界にようこそ、みたいな感じだし、フォーレのレクイエムと同じように安らかだ(「神の怒り」などが入っていないので子守歌みたいだと評されたこともある)。 「コミュニオン(聖体拝領)」の音楽の低音弦楽器の扱い方なんてとてもユニークだ。 指揮者もラモーを指揮する時よりリラックスした感じだった。 オーケストレーションにヴィオラの数が多いこと、フルート2本を指揮者の前に、オーボエはずっと離れた向かって左端の上に、ファゴットは右にと離れていることもめずらしい。オルガンとチェンバロは直角におかれて、同じ奏者がチェンバロを弾くときもオルガンの譜面台に譜面をおいて体をひねって弾いていた。 歌はどれも素晴らしい。カンプラはたしか歌えた人だったと思う。 フィルハーモニーにも雪が残り、次の終末が中国の新年だというので、外壁一面に祭りの映像が映されていて綺麗だった。 この前フィルハーモニーに聴きに行った時はテレマンだったけれど、テレマンって、プロテスタントだったわりにとてもフランスバロック的感性だなあ、と思う。ブロッケス受難曲は説得力ある宗教ドラマだったけれど、あそこまで職人技を駆使できるのは意外と無神論者じゃなかったのかなあ、ラモーも神を信じていなかったんじゃないか、ラモーは神みたいなクリエイトをしてるしなあ、などと思う。 宗教曲でも、ひたすら神に向かうタイプのアーティストと神の使いみたいなアーティストの二種類がいる。 神に向かう人の音楽は構築性があって堅固だ。 いっしょに神に向かわされる。 一方、ラモーの音楽のように超複雑な対位法をホイホイと気ままに繰り出すので全体像がつかめないまま取り込まれてその中でくらくらしてしまうものがある。 弾くときはその創造の秘密を分け合うまで入り込まないといけない。 そこまで弾きこまれていない時は、聴く方も、創造の神秘の外側に置かれて寄せつけられないような印象をもつかもしれない。 で、バッハはユニヴァーサルだけれどラモーは一部の愛好家のものなどと言われたりするのだ。 神を求めることだけが人間の普遍というわけではないのに。 ラモー、シャルパンティエ、カンプラを聴いて外に出たら、星空だった。
by mariastella
| 2018-02-11 09:31
| 音楽
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