L'art de croire             竹下節子ブログ

グルジアについて

 グルジアの問題について何か言うのはすごく難しい。
 
 私は物心ついたときから、いわゆる「東西冷戦」真っ只中だったので、世界とはそういうもんだ、という刷り込みが何となくあった。
 だから、KGB出身のプーチンのあの顔見るだけで、悪役っぽいなあとか思うし、佐藤優さんがいかにソ連がすごかったかあちこちで語ったり、かなり反動的なあやしいことも言ってたはずのソルジェニーツィンが亡くなったとたんにまるで自由の聖人のようにいっせいに讃えられたりするのを聞くと、さもありなんとか思ってしまう。

 ほんとは、ひそかに、コーカサスでのアメリカのやり方はあまりにもひどいロシアの挑発だと思うし、なんだか、第2次大戦に突入してしまった日本の哀れさなんかも連想してしまって、冷戦をやめてないのはアメリカだろ、と思うことがある。

 冷戦だの9・11だので、アメリカ=自由の国につくか、それ以外のあやしい国につくか、みたいな二元論に慣れさせられて、そりゃ、どっちかって言うとアメリカだよな、って思うし、状況によってはアメリカ批判は唇寒し、って感じだ。
 フランスにいても、サルコジが親米なんで、アメリカ批判はサルコジ憎しの反動だけだと受けとられかねないしな・・・。

 確かに、プーチンは見るからに怖そうだ。
 相似形でポーランドの大統領と首相を務めるザ・双子のカチンスキーも、見るだけで「信じられなーい」と思う。

 でも、フランスで、パリ地方の一つで最も所得の高い県であるオードセーヌ県議会の与党のプレジデントは、サルコジの21歳の息子だ。

 常識で考えたら、いや、戦略的に見ても、対外的に見ても、普通はあり得ないチョイスだろう。

 21歳だよ。

 日本でもいくら2代目3代目議員がいるといっても、ここまではないだろう。

 しかもメディアにも出まくってるし。国営ラジオがサルコジ夫人の歌のCDの宣伝してるし。

 こわもてのプーチンも、カチンスキー兄弟も、当地では普通なんだろう。

 で、CIAがオレンジ革命だのバラ革命だの資金援助しまくって、他国の国境線定義には介入しないと約款しているヨーロッパを無視してアメリカがコソボの独立宣言を2月に公認したり、3月にウクライナとグルジアのNATO入りを提唱してうまく行かなかったり、なんと言っても、核兵器のあるなしに関わらずに世界の安全の脅威となる国に対しては核攻撃を仕掛けることができるって理論を去年の終わりにNATOに採択させたことなど、ロシアを硬化させた。
 この7月8日、アメリカによるアンチミサイルのレーダー設置にチェコが合意したし、8月14日にはポーランドが2012年の10台のアンチミサイルの砲台設置にサイン。7月にはアメリカ軍人1000人がグルジアで軍事教練を指導していた。アメリカ政府がグルジア軍のオセアチア自治区攻撃準備を知らなかったとは思えないし、ロシア軍がそれに備えて待機していたことも知っていたはずだ。すべては、ロシアの反応の速さとロシア世論の展開をテストするための挑発だったのかもしれない。

 どっちにしても、コーカサスから、ロシア軍を追い出してNATO軍に置き換える、という意図は見え見えで、こんなことされ続けたら、プーチンじゃなくてもキレルかもしれないし、少なくとも、それを逆に利用して、とにかく力には力を、って連鎖は終わりそうもない。

 今日は9・11の7周年ってことで、昨日の夜、TVでそれに関する英国のブレアのドキュメンタリーをやってた。その時に、2003年、国連の承認なしのイラク派兵に反対するシラクが、ブレアに、「戦争は汚いモノ(une seule chose)だから」という理由を第一に挙げていたのを、あらためて、共感を持って見た。

 そんなこともあって、グルジアを巡る情勢を

 「冷戦が終わっても、ロシアは本当には西側民主主義の国にはなれないのよね」

 式の旧共産圏差別やアメリカ・グループ正当化の言辞では矮小化したくない。

 金と権力に対する欲望の増大が、ありとあらゆる機会をねらい、ありとあらゆる理屈をつけて、弱い者を殺しながら、世界を踏み潰していく。

 所有しているモノや消費するモノで人を測る精神の罠から脱して、自分がいかにあるか、他者をいかにリスペクトできるか、を、自分でも自覚しながら、次世代にも伝えていかなくてはならない。
[PR]
by mariastella | 2008-09-11 21:05 | 雑感
<< B16 がフランスに来ることで... Theopsychologie >>



竹下節子が考えてることの断片です。サイトはhttp://www.setukotakeshita.com/
以前の記事
2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
カテゴリ
検索
タグ
最新の記事
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧