L'art de croire             竹下節子ブログ

無神論いろいろ

 無神論者ほど神にとり憑かれてる人はないというのは本当かもしれない。

 無神論について調べてるだけでも、すっかり「神」と縁が深くなった。

 19世紀から20世紀にかけての西洋人文科学系の無神論は、マルキシズム型、精神分析型とかいろいろあるが、

 「神って、実は人間の発明したものだったんだ」

 というタイプが多い。

 神が創造主だと思っていたら、実は人間が神を創造してたんだ、というわけである。

 それまでにすでに、何世紀にもわたって、とても精緻な懐疑主義やエレガントな偽善があったわけだが、「人間が神を創った」って説を思いついた時は、逆に、革命的だと思ってよほど嬉しかったのか、その後の無神論が単純になった感じがする。
 
 でもその手の無神論って、それほど、神の否定になっているだろうか。

 鶏が先か卵が先か、の議論みたいだとまでは言わないが、主語と目的語が変わっても、あまり意味が変わらない気もしてきた。

 たとえば、親が子を「創った」といえば言えるが、親もまた、子によって日々親になっていくのもまた事実で、そういう関係性の中でしか対象は生まれない。

 一神教系の神は、明らかに人を「救済」したがっている。

 信仰とは無神論の海で無神論の波を掻き分けて神に向かって泳ぐようなものだと言う人もいる。無神論と信仰がセットになっているなら、神と人もセットになっているのかもしれない。

 私のサイトの宗教質問箱の中で、

 「欧米で反宗教、反キリストを掲げる人って実のところキリスト教にくわしかったり、人一倍影響を受けている場合が多いような・・。」

 という感想を述べていた方がいるが、まさにその通りだ。

 ところが、その、キリスト教的教養の高い無神論者って、1968年世代で終わってるみたいな部分もある。それ以降の無神論者は、キリスト教についてただの無知というのがたくさんいる。

 だから、今回教皇がパリで講演した時に、結構感心して、

 「キリスト教のことをもっと知りたくなりましたよ」

 みたいなことをいう精神科医だの心理学者だの政治学者だのがいたりする。

 そのほうがびっくりだ。

 未知の世界だ、と恥ずかしげもなく言う。

 こんなだから、若いエリートが、ちょっと挫折してカルト宗教にはまったりするのかもしれない。

 まあ今回、フランスでは若い人にB16ファンがけっこういたみたいだから、カルト教祖に夢中になるのりだとしても、害は少ないからいい。

 今回の教皇のフランス滞在は共産党恒例のユマニテ祭りと重なった。

 パリ・マッチ誌のマンガで、68年世代のおじいさんがチェ・ゲバラの顔がプリントされたTシャツを着て、ユマニテ祭りに行ってきたよ、と言うと、孫娘が、「I LOVE JESUS」とプリントされたTシャツで、私はB16のミサに行ってきたわ、と言うのがあって、でも今の世の中はもう希望がないから、「愛すること」を信じることが一番いいよね、って感じで二人が合意する。

 多分、この2人にはさまれた世代は、ゲバラにもイエスにも興味がなかったり、どちらの知識もなかったりするんだろう。

 私のトリオの仲間でユダヤ系無神論者の友人はユマニテ祭りで買ったというフリースを練習の時にわざわざ着てきた。もう1人は、終末論的原理主義的なプロテスタント家庭で育ってそこから抜け出した人だが、神なしには生きられない。30代と40代で、政治的には2人ともインテリ左翼である。違った形ではあるが、ゲバラとイエスとに少しずつ引き裂かれてるのかもしれない。


 
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by mariastella | 2008-09-21 07:55 | 宗教
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