L'art de croire             竹下節子ブログ

ユニヴァーサリズムのマクロバランス

 昨夜、一神教と宇宙人についてのエッセイを書いた。
 ついこの前、キリスト教とUFOの親和性についてのコメントを求められて書いたものの補完と言ってもいい。

 超越というものと、地球外というものの関係がその中心にある。

 これは、キリスト教の非宗教化として抽出された西洋近代型ユニヴァーサリズムの話でもあるのだがそれには触れなかった。

 共同体の外、階級の外、国の外、などに仮想敵を外化して、内部の秩序を維持するとか、結束を固めるとか、あるいは支配者への依存状態を作るとかいうのはまあ古典的な手法だが、ユニヴァーサリズムを敷衍していくと、仮想敵の場所がなくなる。
 西洋近代型ユニヴァーサリズムは平等思想と人権思想も生んだから、内部に異端を作って罪をかぶせてしまうという形の共同体結束も難しくなる。

 冷戦の頃のアメリカ映画には、「ソ連のスパイ」だの「核戦争」だののテーマが多かった。「ソ連」が消滅してからは、それが「火星人襲来」とか「巨大隕石の衝突」とか「異常気象によるカタストロフィ」とかにシフトした。その後、21世紀には、「テロリスト」という敵へまたシフトした。

 異常気象ものには、アメリカだけが寒冷化したり大洪水で住めなくなり、途上国に移民をさせてもらって「どうもありがとうございました」、とこれまでの傲慢を反省するというタイプのものもたまにあるけれど、宇宙人襲来ものは、地球人が結束して地球を守るという効用があった。

 人類の危機の前では地球人同士の肌の色とか文化の違いなんて、どうってことないよ、という形での、ユニヴァーサリズムの成就だ。

 そういうことでも起こらなければ、人類みな兄弟という感覚は「自然に」生まれるものではない。人権宣言だって最初はカトリックとプロテスタントの男の納税者が喧嘩せずに仲良くやろう、ぐらいの実質しかなかったし、まあ、それでも革命的だったわけだが、普遍選挙と言っても、女性が「普遍」に含まれたのは、歴史上のほんの最近の話に過ぎない。

 で、ユニヴァーサリズムを標榜する人のなかには、宇宙人やら地球外生物やらが我々の視界に入ってくることを、ユニヴァーサリズム成就の最後のチャンスと見る人がある。
 人間が殺し合いをやめるには、地球外生物との戦争が一番効果的だという発想だ。

 しかし、一方で、現代のカトリックなどは、1992年のガリレオの復権以来、科学的パラダイムの変換を公式に認めたので、人類と同じ、「被造物」仲間の地球外生物の存在を、「科学的」に検証しようとしている。

 「神の存在証明」について、その超越性や無限性ゆえに不可能だとしても、ルネサンス以来の科学主義のおかげで、教会はいろいろあがいてきたが、その科学主義もポストモダンに突入した。神学者たちも夢から醒めたように、神の存在証明に興味を失った。
 そこに、テクニックさえあれば「科学」的に可能なはずの「宇宙人の存在証明」がツボにはまったのかもしれない。

 宇宙人が原罪を免れてるという可能性は大いにある、と語る天文学者の神父さんもいる。

 よく、古代文明は地球外から来たとか、イエス・キリストは宇宙人だったとか、宗教のルーツ=宇宙人説とかがあるが、ユニヴァーサリズムの擁護者はそういう話を当然嫌う。

 ユニヴァーサリズムは文字通り、その概念の中に「ユニヴァース=宇宙」を持っているので、人類と宇宙人を差別しないし、互いを仮想的と見なす共同体主義も避けようとするのが筋だ。
 だとしたら、安易な「宇宙人襲来」によって、たかが地球規模の平和と団結の成就だけを望むわけにもいかないのだ。

 UFOや宇宙人をめぐる言説の変化を観察するのは、ユニヴァーサリズムがどこまでユニヴァーサルなのかというマクロなバランスを知るための有効な方法の一つである。
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by mariastella | 2008-09-23 22:55 | 雑感
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