L'art de croire             竹下節子ブログ

2016年 12月 13日 ( 1 )

ジェローム・カユザックとジャクリーヌ・ソヴァージュ

前にも書いたことがあるジェローム・カユザック元予算担当大臣。

結局隠し財産は何百万ユーロにも達すると分かって、元妻と共に、執行猶予なしの実刑判決が出た。
ごまかした税金は罰金と共にもう支払い済み。

実刑判決が重すぎるという意見もある。 

納税は共和国の根幹にあるものだからそれをごまかしたというのは確かに罪である。
そんな人が、こともあろうに脱税対策を掲げた予算担当大臣に就任していたことがそれに加わる。
普通の人よりも罪が重くなるというのも分かる。

でも、なんだか見せしめ、リンチという感じもぬぐえない。

彼を徹底的に罰することで他の権力者は手を洗っているような。

彼が国会で問われた時に、「外国の口座など持ったことは過去も現在もない」と堂々と嘘をついた映像が何度も流れた。
社会党のユダだとも言われた。

けれども、嘘は罪ではない。

宣誓の後の偽証や、偽造文書を作るとか虚偽の告発をするなどは軽犯罪法や刑法の罪になるけれど、単なる嘘は、それによって被害を受けた人からの告訴がなければ罪にはならない。
モーセの十戒にも、「噓をつくな」とあるわけではなく、「偽証をしてはならない」とあるだけだ。

実際、「嘘も方便」というように、日常生活を円滑にするための嘘はどこにでもあるし、時によっては礼儀でさえある。

カユザックの場合はすでに税法上の罪を犯していて、それを隠すために嘘をついたので、「容疑者」の権利みたいなものだ。

けれども、顔色一つ変えずに堂々と嘘をつき、社会党やフリーメイスンから除名されても、逮捕されても、ポーカーフェイスでいた彼のどこか非現実的な感じが、多くの人に悪印象を与えたのだろう。
私はむしろ、非常に好奇心をそそられるキャラクターだと思ったけれど。

離婚訴訟における不和で妻に密告された。正確に言うと妻が雇った2人の私立探偵から足がついた?
妻のパトリシアはこの前の共和党予備選で惨敗したジャン=フランソワ・コッペの妹だそうだ。コッペも政治に絡んだ金銭スキャンダルの中心人物だ。

まあ、妻の出方の予測も含めて危機管理意識が足りなかったのには驚くけれど、私はなぜかこの人に同情の念を覚える。
まあ、はっきり言って、冷たそうで、誰からも同情をもらえないタイプなのだけれど、彼の「叩かれ方」にはどこか不健全なところがあるからだ。

控訴審でどうなるかはわからないけれど。

もう一つ気分の悪い訴訟事件に、40年以上も虐待を受けたあげくに夫を猟銃で撃ち殺して実刑を受けたジャクリーヌ・ソヴァージュという女性のケースがある。今年初めにオランド大統領が中途半端な恩赦をしたので、結局釈放されなかった。
今は権力争いから抜け出たオランドとカズヌーヴが、この先、完全恩赦に踏み切る可能性はあるのだろうか。

この女性を釈放しないのは、「悔い改めの念が足らない」という理由だった。
もちろん夫は死んでいるから「再犯」の恐れはないし、3人の娘はみな、母が犠牲者であったことを証言し、自分たちも父親に性的虐待を受けていたと証言している。
一人息子は事件の前日に自殺しているそうだ。
女性の実家の父親も妻に暴力をふるっていたと分かっている。

「報復」を連想させる刑罰って気分が悪いし、政治や司法のパワーゲームの影響を受ける刑罰も気分が悪い。

大金持ちで権力も権威も持ち合わせていたカユザックと、生まれながらに不利な環境を抜け出せなかったソヴァージュは、格差社会の両極にいる対照的な人たちだが、どちらからも、「今の世の中の不健全な部分の犠牲者が偽善者たちから叩かれている」かのような印象を受けるのは、不思議だ。
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by mariastella | 2016-12-13 01:02 | フランス



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